1998 Fiscal Year Annual Research Report
歯髄炎が隣在歯歯髄内神経の生理学的特性に与える影響
Project/Area Number |
09470421
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
川島 伸之 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (60272605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
砂川 光宏 東京医科歯科大学, 歯学部, 講師 (30179288)
須田 英明 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (00114760)
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Keywords | 歯髄 / 歯髄血流 / 歯髄内神経 / 分岐神経線維 / マスタードオイル / 軸索反射 / ネコ / レーザードップラー血流計 |
Research Abstract |
歯髄内の細径感覚神経が興奮すると,その神経終末からのみでなく,軸索反射により分岐軸索の終末からも神経ペプチドが放出され,血管拡張が引き起こされることが示されている.また,複数歯の歯髄を支配する分岐神経線維の存在が電気生理学的,解剖学的に報告されている.しかし,このような分岐神経線維によって生じる現象やその意義については明らかにされていない.そこで我々は,歯髄への化学刺激がその隣在歯の歯髄血流と歯髄内神経活動に及ぼす影響を検索した. 実験には,36匹の成熟ネコを使用し,上顎第二前臼歯,第三前臼歯または第三切歯の歯髄に化学刺激(実験群:露髄部にマスタードオイル貼付,対照群:ミネラルオイル貼付)を加え,同顎同側犬歯の歯髄血流および歯髄内神経活動を記録した.歯髄血流の測定には,レーザードップラー血流計を用いた. 第二前臼歯または第三切歯の歯髄に化学刺激を加えると犬歯歯髄血流は有意に増加したが,第三前臼歯歯髄に化学刺激を加えた場合には有意な増加は観察されなかった.一また,第二前臼歯または第三前臼歯への化学刺激により,犬歯歯髄内神経の発射が観察された実験例があった. 第二前臼歯歯髄に化学刺激を加えた際の犬歯歯髄血流の増加は,眼窩下神経切断動物においても惹起され,また,血管収縮剤非含有リドカイン溶液の浸潤麻酔によって有意に抑制された.第二前臼歯抜髄後の歯髄腔にマスタードオイルを貼付した場合には,犬歯歯髄血流の変化は認められなかった.よって,第二前臼歯歯髄への化学刺激によって生じた犬歯歯髄血流の増加は,第二前臼歯と犬歯の両方を支配する細径の分岐感覚神経を介した軸索反射によって引き起こされたと考えられる. 以上の結果より,歯髄に刺激が加わると,複数歯を支配する分岐感覚神経が興奮し,隣在歯に血管拡張反応と歯髄内神経活動が惹起されることが示唆された.
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