1998 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌の発生・増殖・進展に関する研究-特に細胞周期関連因子における異常の検索-
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09470456
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石川 武憲 広島大学, 歯学部, 教授 (10049380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 直 広島大学, 歯学部附属病院, 講師 (50238185)
杉山 勝 広島大学, 歯学部, 助教授 (70187681)
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Keywords | 口腔癌 / 胃癌 / 細胞周期関連因子 / Cyclin F / Cyclin D / 遺伝子 / mRNA / 蛋白 |
Research Abstract |
本年度は,ヒト消化器系の解剖学的癌の発生部位と発生腫瘍の病理組織型の相違に着目して、特に口腔癌と胃癌におけるcyclin E,Dの遺伝子変化とその発現差異の有無を検索した。 1) 実験材料には、ヒト口腔扁平上皮癌由来培養細胞株6株と40例の口腔扁平上皮癌切除組織を用いた。この結果,口腔扁平上皮癌の培養細胞株では、cyclin E遺伝子の増幅はみられなかったが、6株中4株に蛋白の過剰発現が認められた。in vivoの口腔扁平上皮癌40例について、cyclin E蛋白の発現と局在性を免疫染色法により検索した結果、約半数例でcyclin Eが陽性であった。 2) 実験材料として,ヒト胃癌由来培養細胞株7株と45例の胃癌切除組織を用いた。胃癌では、培養細胞7株中1株にcyclin E遺伝子の増幅が認められ、これに継発するmRNAと蛋白の過剰発現も認められた。他の培養株では、遺伝子増幅はみられなかったが、mRNAと蛋白の発現程度は正常細胞に比較して強かった。さらにin vivoの胃癌組織では、45例中7例に、3倍から10倍のcyclin E遺伝子の増幅が認められた。遺伝子増幅のみられた1例を含むこの45例中の8例について、さらにcyclin EのmRNAと蛋白の発現を検索した結果、増幅を示した症例では、これらの著明な過剰発現が認められた。また、免疫染色法によりcyclin E蛋白の発現と局在性を、この8例で検討した結果、cyclin E遺伝子の増幅と蛋白の過剰発現を認めた例では、大多数の腫瘍細胞でcyclin Eが陽性であった。しかし,cyclin D遺伝子の増幅は認めなかった。 以上の結果を総合すると、cyclin E遺伝子の増幅と過剰発現は共に、口腔扁平上皮癌や胃癌の発生、増殖および進展に強く関与していることが考えられたが、消化器系癌の中でも、口腔扁平上皮癌と胃腺癌では、異なった様相を示したことから、消化器系の中でも発生部位や発生癌の組織型により,これら遺伝子の関与状態に相違のあることが推定された。
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