2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09470456
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
石川 武憲 広島大学, 歯学部, 教授 (10049380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 直 広島大学, 歯学部・附属病院, 講師 (50238185)
杉山 勝 広島大学, 歯学部, 助教授 (70187681)
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Keywords | p53 / mdm2 / p14 / 口腔白板症 / 口腔扁平上皮癌 / P53-ARF経路 |
Research Abstract |
本年度は、口腔白板症の悪性化と扁平上皮癌の増殖能の推定根拠として,p53経路に着目し,p53の上流遺伝子産物であるp14ARFと下流遺伝子のmdm2の発現様相を免疫組織学的ならびにウエスタンブロット法で検索した。口腔の白板症57例と扁平上皮癌97例の計154例のホルマリン固定・パラフィン包埋切片とヒト扁平上皮癌由来培養株8株を検索対象とし,対照群は,正常歯肉26例と口腔扁平苔癬20例とした。 I)免疫組織化学的検索:p14,p53およびmdm2の発現様相は,正常歯肉,白板症の非癌化群と癌化群,また扁平上皮癌において異常細胞が増すにつれてp53の発現率は増加し,逆にp14は低下した。p14とmdm2の同時陽性率は,正常歯肉,白板症の非癌化群と癌化群,また扁平上皮癌では異常細胞の度合いに相関して低下した。このうち,分化度の低い扁平上皮癌ほど,その同時陽性率も低下し,低分化癌では同時陽性例はなかった。一方,mdm2陽性でp14陰性の例は悪性度と相関して増加した。間質細胞のmdm2陽性率は,白板症の非癌化群と癌化群では,癌化群に有意に高く,扁平上皮癌は進行例に比べ早期例には発現率が高かった。対照の扁平苔癬21例中,85%の粘膜下結合織の帯状の浸潤リンパ球はmdm2陽性であったが,正常歯肉の間質細胞にはmdm2は陰性であった。II)ウェスタンブロット法による検索:ヒト口腔癌細胞株の8株中、p14とmdm2の両方が同時発現した例は1株のみであった。 以上の結果,口腔白板症の悪性化や口腔扁平上皮癌細胞のp53に対するp14とmdm2の関係は,細胞や組織の悪性化につれてp14ARFの発現が低下するため,p53-ARF経路に異常が生じる。そのためmdm2の作用でp53の分解が促進されることが増殖機序の一因になる可能性があると推定された。また,上皮細胞や組織の悪性化に対し,間質細胞が,生体防御機構の一環として参加している可能性が強く推定され,この視点から,各種の病変に対する実験への拡大が期待される。
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