2000 Fiscal Year Annual Research Report
病原遺伝子のアンチセンスRNA導入によるう蝕細菌の非病原化療法
Project/Area Number |
09470474
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Research Institution | Nihon-University |
Principal Investigator |
山下 喜久 日本大学, 歯学部, 教授 (20192403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 富久 日本大学, 歯学部, 助手 (40246905)
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Keywords | Streptococcus mutans / バクテリオファージ / う蝕予防 / 自己溶解酵素 |
Research Abstract |
Streptococcus mutansを同細菌の死菌体を含む寒天培地に接種すると培地中の菌体を溶菌することが最近我々の研究室で明らかになり、S.mutansが自己融解酵素を菌体外に分泌していることが確認された。そこで、この自己融解酵素の産生を誘導するファージを作製すれば、当初の目的であったアンチセンスRNAを導入するよりも、う蝕抑制効果の高い予防法が開発できると考えた。 まず、S.mutans Xc株の染色体遺伝子をSau3AIで完全消化し、S.mutans内で複製できないプラスミドpResEmBBNに組み込んだクローンバンクを作製した。このクローンバンクでXc株を形質転換し、S.mutansの死菌体を含む寒天培地上で菌体を溶菌できない変異株を選択した。この結果得られた形質転換株10株についてその染色体遺伝子中のプラスミド挿入部位の塩基配列を決定したところ、その1株のプラスミド挿入部位にブドウ球菌の自己融解酵素をコードする遺伝子と相同性の高い遺伝子が同定された。さらに興味深いことに、この遺伝子の近傍には他の連鎖球菌で既に同定されているファージの構成遺伝子と類似した遺伝子群が認められた。この結果、S.mutansの染色体遺伝子の自己溶解酵素をコードするこの遺伝子領域はファージが溶原化した部位と考えられる。 つまり、この領域の遺伝子の発現の増減に関与する遺伝子や培養条件を調べ、コードされているファージ遺伝子群を高率に発現させれば、S.mutansを溶菌するファージを菌体外に効果的に誘導することが可能になると考えられる。残念ながら、本研究の研究期間内には最終目標であるアンチセンスRNAを導入するファージを作製するには至らなかったが、本研究の結果は上記の通り、S.mutansに感染してこれを溶菌するファージの開発に大きく寄与すると考えられる。
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