1997 Fiscal Year Annual Research Report
砂ネズミにおけるヘリコバクター・ピロリ感染誘発胃潰瘍の発生機序の解明
Project/Area Number |
09470508
|
Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
岡部 進 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (90012624)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天ヶ瀬 紀久子 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (60278447)
高橋 悟 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (20268098)
|
Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 砂ネズミ / 胃炎 / 胃潰瘍 / CINC / プロスタグランジン / NSAID |
Research Abstract |
ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)感染による胃潰瘍の発生機序について砂ネズミモデルで検討した。胃病変の発生を経時的に解析したところ、幽門部粘膜表層の損傷が最も初期に出現することを見出した。このとき粘膜内は正常であり、ミエロパーオキシダーゼ活性や好中球の遊走刺激活性はほとんど見られなかった。以上の結果より、H.pylori感染初期の胃損傷には感染宿主の免疫反応の関与はなく、H.pyloriによる直接的な傷害によるものと示唆された。この損傷に引き続いて幽門部粘膜内の炎症、さらに胃体部粘膜内炎症および胃体部の出血性損傷が見られた。胃体部の損傷はその前に誘起された炎症の激しさに関連することから、胃体部損傷の発生には宿主側の免疫反応の関与も考えられた。炎症細胞の粘膜内浸潤は好中球遊走刺激活性の発現・増加と対応しており、強力な好中球の遊走刺激因子であるサイトカイン誘導性好中球走化性因子(CINC)の発現・増加も認められた。除菌療法を行うとCINCの発現レベルは低下し、粘膜内炎症も軽減された。従って、粘膜内で産生されるCINCは胃体部損傷の発生に関与するものと思われる。一方、プロスタグランジン(PG)は最も重要な胃粘膜保護因子であり、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は胃潰瘍発生の危険因子のひとつとして知られている。H.pylori感染による胃潰瘍の発生過程における胃粘膜PGE2産生を検討したところ、胃炎の進行とともにPGE2産生は増大し、潰瘍発生まで持続的に高値を示した。低用量のインドメタシンの連続投与は非感染動物においては何ら胃傷害を誘起しなかったが、H.pylori感染動物では胃潰瘍を短期間で発生させた。PGE2産生は顕著に抑制されていたが、H.pylori生菌数はむしろ低下した。以上の結果より、H.pylori感染によるPGE2産生増大は宿主の防御反応の亢進と考えられ、その抑制は潰瘍発生を促進することが判明した。従って、非感染者への投与以上に、H.pylori感染者へのNSAID投与は危険性が高い可能性が示された。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 毛戸祥博ほか: "砂ネズミにおけるHelicobacter pylori感染胃潰瘍モデルの作製" 実験潰瘍(Ulcer Research). 24. 194-196 (1997)
-
[Publications] Takahashi S.et al.: "Pathological changes in the formation of Helicobacter pylori-induced gastric lesions in Mongolian gerbils." Dig.Dis.Sci.(in press). (1998)