1997 Fiscal Year Annual Research Report
QOLと経済面からみた血液腎透析と腹膜腎透析の比較研究
Project/Area Number |
09470515
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
濃沼 信夫 東北大学, 医学部, 教授 (60134095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 道哉 東北大学, 医学部, 助手 (70221083)
西沢 理 信州大学, 医学部, 教授 (60091815)
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Keywords | 血液透析 / 腹膜透析 / QOL / 経済分析 |
Research Abstract |
【目的】透析患者を巡る社会経済環境は、高齢化の進行、合併症の複雑化、要介護や痴呆症の増加などにより、過去とは大きく様相を異にしている。このため、近年進歩の著しいQOL評価の手法を用いて、透析患者のQOLを多面的に検討することは極めて重要となっている。また、人工透析に投じられる医療費の総額は年間1兆円に達すると推計され、透析の経済分析は中長期的な腎不全対策を検討する上で欠かせない視点と考えられる。そこで、国により実施割合に大差のある血液透析と腹膜透析の優劣について、判断分析の手法を用いてQOLと経済の側面から比較検討し、両者のをどの様な時に選択すべきかの判断基準を明らかにする。 【対象と方法】初年度は、診療録、レセプト、および独自に開発したQOL調査票を用いて、限られた施設と透析患者を対象に血液透析と腹膜透析の比較調査を実施し、患者の基本情報をもとに、QOL評価法と経済分析法を統合した結果の解析を試みた。すなわち、地域中核病院6施設の透析患者140名(血液透析、腹膜透析各70名)を対象に、調査を実施した。QOL調査は、21項目からなる横断的な調査に加えて、透析導入から約2年間にわたる健康状態を、患者、家族、主治医、看護婦の4者からLinear analog scaleで把握することとした。レセプト調査では、この観察期間の医療費を累積して費用便益分析を行い、血液透析、腹膜透析の優劣を比較した。 【結果と考察】透析患者48名(血液透析38名、腹膜透析8名)の仮集計を行った。QOLの横断調査では、仕事や日常生活での不安は、両者とも多く、「ある」「少しある」を合わせると各63.6%、62.5%であった。両者で有意な差を認めたのは、親身になってくれる友人の数で、血液透析で多い傾向がみられた(χ^2検定、P<0.001)。だるさについては、血液透析で様々であるのに対し、腹膜透析はすべてが「たまにある」であった。腹膜透析の患者7名について、約1月間の健康状態を毎日調査した結果では、100点標記(0が最悪、100が最良)で患者本人は67.29±15.71、透析介助にあたる家族からみた患者は71.14±13.19、家族自身は78.72±11.73であった。患者本人の評点と家族からの評点とは有意の差はなく、家族は患者の健康状態をかなり的確に把握していることが窺えた。
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[Publications] 濃沼信夫: "アメリカにおける病院機能評価の理論と実際" Medical QOL. 29. 16-17 (1997)
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[Publications] 濃沼信夫: "クリニカル・インディケーターによる評価." Medical QOL. 30. 16-18 (1997)
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[Publications] 濃沼信夫, 伊藤道哉: "脳死・臓器移植." プライマリ・ケア. 20(2). 189-194 (1997)
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[Publications] 濃沼信夫: "ヘルスマンパワーの量と質." からだの科学臨時増刊「医療改革」. 14. 104-111 (1997)
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[Publications] 濃沼信夫: "癌検診の現状と経済性." Medical Practice(臨時増刊号「実地医家のための癌臨床ガイド」). 47-56 (1997)
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[Publications] Nobuo Koinuma, Michiya Ito: "Economic analysis of cancer treatment taking QOL into consideratio" European Journal of Cancer 33 Suppl. 9. S29 (1997)
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[Publications] 濃沼信夫, 岩崎 栄, 高柳和江: "「人間医療学」 日本の医療の現状." 南山堂, 65-89 (1997)
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[Publications] 濃沼信夫: "日本プライマリ・ケア学会「プライマリ・ケアを目ざす医師研修ガイドブック」" 医療関係法規., 145-152 (1997)