1998 Fiscal Year Annual Research Report
氷床コアから得られる気候・環境変動情報の信頼度高度化の研究
Project/Area Number |
09480112
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
成田 英器 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (20001662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄子 仁 北見工業大学, 工学部, 教授 (50201562)
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Keywords | 気候・環境変動 / 結晶粒径 / C軸方位・分布 / 褶曲構造 |
Research Abstract |
グリーンランド氷床の底部層から採取されたイーミアン間氷期の氷は,褶曲構造になっており,氷床流動による物理過程が気候・環境情報の時間的秩序を乱している。この問題を解明するために,本研究では,GRIP(Greenland Ice Core Project)から受けた氷床コア(深さ777mから2977m間で25個の長さ55cmサンプル)を用い,氷床の成層構造,褶曲構造,及びそれらの遷移過程における物理構造(結晶粒,及び気泡形態,C軸方位分布など)を明らかにすると共に,流動変形に伴う気候・環境シグナル(化学不純物など)の再配列挙動を解明することであった。 これまで,試料25個の結晶粒径とC軸結晶方位分布の測定を終えた。その結果,以下のことが分かった。結晶粒は浅層部から徐々に大きくなり,ウィスコンシン氷期氷で急に減少し,底部で再び大きくなる。特に,ウィスコンシン氷期以深の氷に見られるクラウディー・バンド層(Claudy band)の結晶粒は非常に小さくなっている。一方,C軸分布は深部になるにしたがってランダムから一極大型へとなってゆく。この結晶方位分布の異方性は氷の流動特性に直接反映する。即ち,鉛直方向の圧縮に対して氷は深さと共に硬くなることである。また,クラウディー・バンド層がもつC軸方位分布から考えられる硬さは実験結果よりも非常に大きいことが分かった。この局部的性質の違いは,褶極構造への構造変化を助長するものと考えられる。このことを基に,現在低速度剪断変形実験を行い,物理構造変化と不純物再配列の挙動を解明する実験を行っている。
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