1999 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化環境下における中間温帯林の炭素循環・収支の動態予測
Project/Area Number |
09480117
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中根 周歩 広島大学, 総合科学部, 教授 (00116633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土谷 彰男 広島大学, 総合科学部, 助手 (00263632)
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Keywords | 温暖化 / 中間温帯林 / 炭素循環 / 植生動態 / 光合成 / 分解 |
Research Abstract |
高CO2・高温度環境下での樹木の光合成などの生理活性に関する研究が盛んに行われつつあるが、野外の林分を対象にした研究は極めて少ない。さらに、現環境下でのこの種の研究報告も依然として限られており、今後温暖化環境下での森林生態系における炭素循環・収支を予測する上で大きな障害となっている。そこで、わが国の温帯林の一つで、温暖化の影響を受けやすいと思われるコナラ林を例に、現環境下での光合成特性、生産力特性について昨年度に引き続き調査した。調査地は広島県吉和村の約60年生コナラ林とそれに隣接する伐採跡地である。立地は標高700mの南西向き緩斜面で母岩は玄武質溶岩で、この地域の年平均気温は 11.5℃で、年降水量は約2,200mmである。光合成速度の測定は携帯型光合成蒸散測定装置(Ll-6400)を使用し、1998年9月と1999年7月に、伐採跡地でのコナラ葉(陽葉)、林縁部の中間葉、及び林床の陰葉の光-光合成曲線、蒸散速度を求めた。さらに、光量子センサーをポールを用いて、林冠表面(高さ23m)から8、14、12、19.5mにそれぞれ設置し、通年、20分間隔で有効日射量を記録した。さらに、年間落葉量(小川ら1997)と比葉面積からコナラ林の葉面積比(m^2/m^2)を求めた。落葉期(11月〜5月)を除いた、群落全体の光減衰係数は0.78と推定されたが、ブナ林(0.65)やコジイ林(0.50)(依田1971)と比較して大きい。上層(陽葉)、中層、下層(陰葉)のコナラ葉の光-光合成曲線において、光補償点は陽葉(34μmolquanta/m^2・s)→中間葉(23)→陰葉(8.4)と、また光飽和光合成速度も順に14mmolCO_2/m^2・s→6.4→2.5と低下した。これに対応して気孔コンダクタンスも減少した。これらの光-光合成曲線は季節的、温度的には有意な変異がないので、この曲線と日射量のデータから層別及び群落全体の年総生産量を求めたところ、18tC/ha・yr、純生産量は4.6tC/ha・yr、呼吸量は13.4tC/ha・yrと推定された。
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