1997 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による遺伝的不安定性の誘導と細胞がん化過程への関与
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09480126
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
渡邉 正巳 長崎大学, 薬学部, 教授 (20111768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 啓司 長崎大学, 薬学部, 助手 (00196809)
児玉 靖司 長崎大学, 薬学部, 助教授 (00195744)
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Keywords | 低線量放射線照射 / ヒト胎児由来細胞 / 突然変異 / 染色体異常 / 遅廷型細胞死 / 放射線応答現象 / 遺伝的不安定性 |
Research Abstract |
ヒトおよびマウス由来の培養哺乳類細胞にX線を照射後、その細胞集団を培養し、経時的に細胞におけるコロニー形成能、染色体異常およびHGPRT遺伝子座における突然変異出現頻度を比べたところ、照射後2カ月以上経て、細胞が既に30数回分裂した後であっても、非照射細胞に比べコロニー形成率は、50%以上低く、染色体異常は5-20倍高く、突然変異頻度は20-30倍高いことがわかった。これらの結果は、いずれも、低線量放射線に対する細胞の応答現象として、放射線による直接損傷が引き金にならない遺伝的不安定性が誘導される可能性を示唆している。さらに、遅廷的に生ずる染色体異常として致死的異常である二動原体が全体の50%近くを占めること、その二動原体染色体はフラグメントを伴わないものであることなどから、細胞の分裂の度に新たに染色体異常を生成していると予想される。この種々の遺伝的不安定性の誘導は、数cGyのX線の事前照射で抑制されることがわかった。さらに、低線量放射線の照射で抑制される二動原体染色体は、フラグメントを伴うものに限られることから、二動原体染色体の誘導機構として、少なくとも2つの経路が存在することが予想される。フラグメントを生ずるためには、DNAあるいは染色体に切断が生じ、再結合することが必須である。一方、フラグメントを持たない二動原体染色体の誘導には、染色体の末端融合を介した経路が関与していると考えられる。この場合は、最も考えられるのは、染色体末端に存在するとされるテロメア構造が不安定化することであるので、放射線照射によるテロメアの不安定化の促進の有無を調べたところ、明らかに、放射線照射によって未照射群の細胞に比べて長期間に渡ってテロメアが不安定なまま存在し続けることがわかった。現在、テロメア不安定化のメカニズムとともに遺伝的不安定性を記憶する機構を調査中である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Z. Yang et al.: "Telomerase activity, Telomere Length, and Chromosome Aberrations in the Extension of Life Span of Human Embryo Cells Induced by Low-dose X-rays" J. Radiat. Res.in press. (1998)
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[Publications] K. Suzuki et al.: "Effect of low dose preirradiation of the hap70B-LacZ fusion gene in heat-shock treated human cells" Radiat. Res.149. 195-201 (1998)
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[Publications] F. Yatagai et al.: "Analysis of the mutations in human HPRT gene induced by heavy-ion irradiation(III)" RIKEN Accel. Prog. Rep.30. 133 (1997)
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[Publications] T. Matsumoto: "Reaction of long-lived radicals and vitamin C in γ-irradiated mammalian cells and their model system at 259K. Tunneling reaction in biological system" Radiat. Phys. Chem.49. 547-551 (1997)
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[Publications] M. Suzuki, M. Watanabe et al.: "LET dependence of cell death and chromatin-break induction in normal human cells irradiated by neon-ion beams" International Journal of Radiation Biology. 72. 497-503 (1997)
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[Publications] M. Watanabe: "Biological effects of high LET radiatiuons" JAERI-Conf. 97-003. 53-58 (1997)
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[Publications] M. Watanabe et al.: "Genetical Instability induced by low dose radiation." High Levels of Natural Radiation. 391-395 (1997)