1997 Fiscal Year Annual Research Report
超高速X線回折によるアクチン線維の構造変化・伸展性の収縮力発生との相関解明
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09480175
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若林 克三 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (00029521)
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Keywords | 高速X線回折 / シンクロトロン放射光 / 骨格筋の収縮 / 筋フィラメントの伸展性 / アクチンフィラメント / ミオシンフィラメント |
Research Abstract |
本研究はシンクロトロン放射光を使ったX線回折によって筋肉中のアクチンフィラメント反射の強度と位置(スペーシング)の変化をサブミリ秒の時間分解能で調べ、アクチンフィラメントの構造変化・伸展性と張力発生の関係を明らかにすることを目的としている。 高エネルギー研フォトンファクトリーのシンクロトロンストレージリングの高輝度化改善作業は平成9年11月に終了し、現在高輝度化試運転が行われ平成10年5月から高輝度放射光の利用が本格的に行われる。この作業の間、我々は集束光学系の改善と検出器の高速化を進めてきた。集束光学系は一枚の白金コートしたミラーを4点ベント方式で湾曲させることにより、ミラーの受光角を従来の2倍にし、上下方向の集束ビームの大きさを半分にすることができた。このことにより高輝度化ビームが利用出来る時点では従来より一桁強いX線を利用できることが明確となった。X線検出器はドラム型イメージングプレート回転装置の改善を進めた。25x40cmのイメージングプレートを2枚縦に並べて利用し、電気的ノイズの原因となるデータ読み取り部を別途使用とした。反射はこのイメージングプレート上に1次元ストリークパターンとして記録される。ドラムを最高させて(20rps)使用したとき、25マイクロ秒の時分割測定が可能となっている。 骨格筋のアクチンフィラメントの力学的性質を良く理解するために、筋節長を変えたり、収縮筋に筋長変化を与えることによって発生張力を変えて行ったX線回折のデータ解析を進めた。アクチン反射スペーシングの変化量と力は線形となり、アクチンフィラメントの伸びは純弾性的であることが明確となった。さらに硬直状態にある筋肉についての実験データの解析から、アクチンフィラメントは活性時同様の弾性的性質を持つことが明らかとなった。このことからアクチンフィラメントの力学的性質は筋の状態によらずフィラメント固有の性質であることがわかってきた。
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[Publications] 若林克三: "アクチンフィラメントの伸びと筋収縮" 日本物理学会誌. 52. 599-605 (1997)
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[Publications] 若林克三: "トリスタン主リングアンジュレーター光を利用した骨格筋の高分解能X線回折" 放射光(日本放射光学会誌). 10. 108-120 (1997)
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[Publications] 杉本泰伸: "X線でとらえた分子モーターの形態変化" 「生体分子モーターの仕組み」シリーズニューバイオフィジックス 共立出版. 第4巻. 86-103 (1997)
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[Publications] K.Wakabayashi: "Conformational changes of actin and myosin during force production in muscle studied by X-ray diffraction" Structure and Function of Macromolecular Assembly edited by K.Namba,Taniguchi Foundation. 283-294 (1997)
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[Publications] 上野 豊: "シンクロトロン放射光による動的X線回折" 「バイオイメージング」シリーズニューバイオフィジックス 共立出版. 第7巻. 170-194 (1998)
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[Publications] K.Wakabayashi: "High-Resolution X-ray Diffraction of Muscle Using Undulator Radiation from the Tristan Main Ring at KEK" J.Synchrotron Rad.5(In press). (1998)