1998 Fiscal Year Annual Research Report
線虫C.elegansの神経機能の分子生物学解析-遺伝子からニューロン・神経回路を経て行動まで-
Project/Area Number |
09480190
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
桂 勲 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (00107690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 健 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助手 (10249948)
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Keywords | 線虫 / C.elegans / 変異体 / 神経機能 / 行動異常 / T-box / WD40 / 感覚繊毛 |
Research Abstract |
遺伝子・神経回路・行動の間の関係を解明するために、線虫C.elegansの種々の変異体の解析を行っているが、本年度は以下の成果を得た。 (a) クラス2flr遺伝子の1つであるするflr-2遺伝子について:flr-2の遺伝子とcDNAをクローニングしたところ、TGF-βに結合してその活性を抑制するDAN/Gremlin/Cerberusファミリーの蛋白質とホモロジーががあった。flr-2の変異はflr-1,flr-3およびflr-4変異の成長の遅さを抑圧するので、成長因子の阻害物質をコードしていると考えると説明がつく。 (b) unc-31変異の存在下でdauer幼虫形成が構成性になる変異として分離したsdf-13変異は、走化性には異常がないが、一部の揮発性物質に対する脱感作に異常があることがわかった。この遺伝子をクローニングしたところ、マウスのTbx2やショウジョウバエのOmbのようなT-boxをもつ転写因子をコードしていた。 (c) 代謝型グルタミン酸受容体遺伝子の1つmgl-1の破壊株が、揮発性物質への走性と銅イオンの忌避の各々は正常だが、どちらを優先するかという選択が異常なことを以前に見つけていた。この表現型は、mgl-1の変異ではなく、付近のside mutationによることを発見した。現在、この遺伝子をクローニングしているところである。 (d) 感覚繊毛の伸長に必要なche-2遺伝子をクローニングしたところ、WD40リピートをもつ新規の蛋白質をコードしていた。この遺伝子は、感覚繊毛をもつ神経の大部分で発現し、CHE-2蛋白質は繊毛に局在していた。異種のプロモーターを用い、一部の感覚神経でのみche-2を発現したところ、発現した神経のみ形態と機能が正常に戻った。感覚繊毛の伸長は野性型では胚発生後期に起きる。熱ショックプロモーターによる強制発現では、成虫になってから繊毛を伸長させることもできた。また、発現を止めると繊毛は、徐々に短くなった。CHE-2は繊毛の伸長だけでなく維持にも必要なこと、繊毛形成のプログラムは時期に関して柔軟性があることがわかった。
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