1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09480228
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 健雄 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教授 (10201469)
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Keywords | 昆虫 / 社会性昆虫 / ミツバチ / 高次行動 / 記憶 / キノコ体 / cDNA / Ca^<2+> |
Research Abstract |
ミツバチは社会性昆虫であり、ダンス言語などの他の昆虫には見られない多彩な社会行動を示す。しかしながら、ミツバチのように小さな脳を持つ昆虫が、どうしてこのような高次行動を示すことができるのかは全く不明である。ミツバチの脳では、感覚統合や記憶の中枢と考であるキノコ体が他の昆虫に比べて顕著に発達しており、キノコ体の機能の高度化が、その高度な社会行動の基盤となった可能性がある。本研究では、ミツバチの高次行動を規定する遺伝子の候補として、キノコ体特異的に発現する遺伝子をDifferential display法にて検索し、以下の成果を得た。 1、 ミツバチのキノコ体を構成する2種の介在神経細胞(ケニヨン細胞)のうち、大型ケニヨン細胞特異的に発現するM5遺伝子と、小型ケニヨン細胞特異的に発現するKs遺伝子を世界で初めて同定した。また、これらの遺伝子の蛹の脳での発現解析から、ミツバチのキノコ体の内部構造を解析した。これらの遺伝子の転写産物はともに、有意なORFを含まないことから、非翻訳性RNAとして機能する可能性がある。今後、これらの遺伝子産物の機能解析を通じミツバチの高次行動を支えるキノコ体の機能が解明されるものと期待される。 2、 さらに、ミツバチのケニヨン細胞ではCa^<2+>情報伝達系に関わる遺伝子群(IP3受容体、CaMKII、PKCの遺伝子)の発現増強が起きていることを示した。ショウジョウバエでは、これらの遺伝子はともに脳皮質に一様に発現すると報告されている。神経細胞におけるCa^<2+>情報伝達系は、多くの動物種で、記憶や学習の成立に重要と考えられているが、ミツバチのキノコ体ではCa^<2+>情報伝達系の機能が亢進することにより、シナプス可塑性が増強している可能性が指摘できる。昆虫の脳の機能と行動の系統進化といった観点からも非常に興味深い知見と思われる。
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[Publications] Kamikouchi,A: "Preferential expression of the gene for a putative inositol 1,4,5-triphosphate receptor homologue in the mushroom bodies of the brain of the worker honeybee Apis mellifera L." Biochem.Biophys.Res.Commun.242. 181-186 (1998)
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[Publications] Arai,T: "Cloning of cDNA for regenectin,a humoral C-type lectin of Periplaneta americana,and expression of the regenectin gene during leg regeneration." Insect Biochem.Mol.Biol.28. 987-994 (1998)
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[Publications] Kitabayashi,N.A.: "Molecular cloning of cDNA for p10,a novel protein that increases in the regenerating legs of Periplaneta amcricana(American cockroach)" Insect Biochem.Mol.Biol.28. 785-790 (1998)
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[Publications] Ito,T.: "Gene organization and chromosome mapping of the testis-specific S-II." Mammalian Genome. 9. 915-917 (1998)