1997 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス可塑性の分子機構:カルシウムの下流の分子を探索する
Project/Area Number |
09480229
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 伸郎 京都大学, 医学研究科, 助教授 (10152729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宝子丸 稔 京都大学, 医学研究科, 講師 (70211539)
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Keywords | 神経可塑性 / シナプス可塑性 / 細胞内カルシウム / カルシウム測光 |
Research Abstract |
シナプス伝達長期増強・抑圧(LTPとLTD)はシナプス伝達効率を上げまたは下げるという正反対の過程でありながら、その誘導にはどちらも細胞内カルシウムの増加を必要とする。しかし、いったんカルシウムが増加した時に増強(LTP)と抑圧(LTD)のどちらが起こるかという弁別機構の詳細は不明である。これを理解するためには、カルシウム増加が次に何を引き起こすかを知る必要がある。この観点から本研究では、時間的空間的に異なったタイプのカルシウム増加がそれぞれ別のカルシウム依存性分子群を活性化して、LTPかLTDという異なった最終結果をもたらすかどうかを検討している。具体的には、(1)電気生理学的計測によるシナプス可塑性誘導の確認、(2)カルシウム計測によるカルシウム増加の時間的空間的パターンの検出、(3)逆転写-ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)による上方または下方調節を受ける分子の同定、という三種類の実験を単一細胞において遂行し、細胞内カルシウム増加以降に神経細胞内に引き起こされる分子的事象を追跡することをめざしている。今年度は、視覚皮質と海馬より作成したスライスを用いて、電気生理学的計測とカルシウム計測を中心にカルシウムイメージングの鮮明化、カルシウム計測の信頼性の向上などに主に取り組み、その面でおおいに進展した。他方ではLTPまたはLTD誘発によって上方または下方調節されるmRNAの同定を念頭において逆転写-ポリメラーゼ鎖反応を稼動開始させることを行った。本年度は本研究計画の初年度ということもあり、研究発表できる段階には至っていないが、本年度配分の本補助金によって冷却遠心機などの備品を購入し、消耗品も薬品類中心に十分使用することが出来た。
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