1998 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス可塑性の分子機構:カルシウムの下流の分子を探索する
Project/Area Number |
09480229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 信郎 京都大学, 医学研究科, 助教授 (10152729)
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Keywords | カルシウム / 活動電位 / シナプス / シナプス可塑性 / カルシウム放出 / カルシウムチャンネル |
Research Abstract |
視覚皮質と海馬より作成したスライスを用いた電気生理学的計測とカルシウム計測を実行し、カルシウムイメージングの鮮明化、カルシウム計測の信頼性の向上などに昨年度取り組んだ結果を受けて、今年度はまずシナプス伝達長期増強・抑圧(LTPとLTD)の弁別機構をさらに調べた。すなわち、LTPとLTDはシナプス伝達効率を上げまたは下げるという正反対の過程であって、その誘導にはどちらも細胞内カルシウムの増加を必要とするが、いったんカルシウムが増加した時にLTPとLTDのどちらが起こるかという弁別機構の詳細は不明であるので、それを調べることをめざした。まず細胞内カルシウムストアからのカルシウム放出はLTDを促進させることがわかった。さらにLTPに関しては、海馬スライス標本では生後2-3週には大きなLTPが起こるのに対して生後1週ではおこらないことが分かった。この生後変化と同期して、活動電位に起因する細胞内カルシウム上昇が増加していくことがわかった。このカルシウムは電位依存性カルシウムチャンネルを介して細胞内に流入していることもわかった。これらより、活動電位起因性カルシウム流入がLTP誘発を規定していることが示唆される。これらの実験から、時間的空間的に異なったタイプのカルシウム増加がそれぞれ別のカルシウム依存性分子群を活性化して、LTPかLTDという異なった最終結果をもたらすという仮説が充分に支持されているといえる。(1)シナプス可塑性誘導の確認、(2)カルシウム増加の時間的空間的パターンの検出、(3)カルシウムにより上方または下方調節を受ける分子の同志という三種類の実験の複合的遂行という目標のうち、(1)(2)については結果が得られ、今後は細胞内カルシウム増加以降に神経細胞内に引き起こされる分子的事象を追跡する予定である。
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