2000 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス可塑性の分子機構:カルシウムの下流の分子を探索する
Project/Area Number |
09480229
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
加藤 伸郎 京都大学, 医学研究科, 助教授 (10152729)
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Keywords | シナプス可塑性 / シナプス伝達 / 長期増強 / 長期抑圧 / カルシウム流入 / カルシウム放出 / 細胞内小胞体 / カルシウムイメージング |
Research Abstract |
シナプス伝達長期増強・抑圧(LTPとLTD)の誘導に際しては、そのいづれにも細胞内カルシウムが関与している。しかし、一旦細胞内カルシウムが上昇したときにLTPとLTDのどちらが弁別的に誘導されるかを決める機構の詳細は不明である。細胞内カルシウムストアからのカルシウム放出はLTPよりもむしろLTDを促進させることをこれまでの研究で明らかにしてきた。従来カルシウム放出は細胞内での化学反応を介して調節されることが知られており、こうして起こるカルシウム放出は神経細胞の活動を反映する活動電位に比して極めて遅い時間経過をとる。したがって神経細胞の活動に追従できるほど充分に高速のカルシウム放出が起こるかどうかは自明ではないし、これまでは不明であった。われわれは、細胞内カルシウム上昇をフォトマルチプライアをもちいて計測することにより、新規のカルシウム放出機構の存在を明らかにし、この機構によるカルシウム放出が活動電位依存的に起こることを昨年報告した。この新規カルシウム放出機構の機能的意義を調べたところ、活動電位の発火頻度を負帰還的に制御することによって細胞の興奮性制御に関与することが判明した。海馬CA1における標準的なLTPとLTDの誘導プロトコールにおいては、刺激周波数が重要な意味を持つため、この新規のカルシウム放出機構がシナプス可塑性誘導にも深く関わることが示唆される。これまでの実験から、活動電位起因性のカルシウム流入がLTP誘発を、活動電位起因性のカルシウム放出がLTD誘発を規定していることがさらに支持された。これらの実験から、異なったタイプのソースから供給されるカルシウムがそれぞれ別のカルシウム依存性分子群を活性化して、LTPかLTDという異なった最終結果をもたらすという仮説がより強く支持されてきた。それがどのような分子であるかは、今後さらに追求する必要がある。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Y.Isomura,N.Kato: "A possible regularory role of dendritic spikes in induction of long-termpotentiation at hippocampal Schaffer collateral-Ca1 synopsis"Brain Res. 883. 119-124 (2000)
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[Publications] Yoshimura,H.,Kato,N.: "Diverse roles of intracellular cAMP in early synoptic modifications in the rat visual Cortex"J.Physiol.(London). 522. 417-426 (2000)
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[Publications] Yamamoto K.Hashimoto K Isonura Y.Kato N: "An IP_3-assisted form of Ca^<2+>-induced Ca^<2+> release in neocortical neuras"Neuro Report. 11. 535-539 (2000)
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[Publications] Kato N,Isomura Y,Tanaka T.: "Intracellular calcium releases facilitate induction of long-term depression"Neuropharmacology. 39. 1107-1110 (2000)