1998 Fiscal Year Annual Research Report
微小核細胞融合による染色体トリソミー症候群モデル動物の開発
Project/Area Number |
09480247
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
舟木 賢治 島根大学, 教育学部, 助教授 (90091579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
押村 光雄 鳥取大学, 医学部, 教授 (20111619)
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Keywords | 微小核細胞融合 / 染色体移入 / ヒト染色体 / 胚幹細胞 / キメラマウス |
Research Abstract |
本研究では、微小核細胞融合法を用いてマウス胚幹細胞にヒト染色体断片を移入することによりヒト染色体を保持するキメラマウスを作製し、その異常胎仔について解剖学的、組織学的検索を行った。ヒト染色体断片の移入には、G418耐性遺伝子であるneoを標識した2番染色体を保持するマウスA9細胞にγ線を照射した後、微小核細胞を作製してマウス胚幹細胞と細胞融合した。細胞融合した胚幹細胞をG418含有培地で選択培養することによって得られた細胞株のうち、ヒト2番染色体断片を保持する細胞をBalb/cマウス由来の8細胞期胚に移植し、その宿主胚を子宮に移植した。その結果、ヒト2番染色体上に存在する免疫グロブリン遺伝子の発現がみられるキメラ個体を得ることができた。このキメラ個体の交配によって得られた4個体の異常胎仔について観察した結果、すべての個体で眼瞼が開き、浮腫や口唇の癒合不全がみられ、3個体では前肢の多指がみられた。骨染色標本による骨格の観察では、すべての個体に胸骨や頚椎椎体の形成不全がみられるなど骨形成にも影響を及ぼすことが明らかとなった。さらに、内臓では心臓、肝臓、腎臓などの肥大がみられ、組織学的にも心筋繊維の蛇行、肝細胞の空胞化や壊死、腎臓におけるボーマン嚢内出血など種々の異常が認められた。 以上のようにマウス細胞へのヒト染色体導入によるマウス胚の発生におよぼす影響は多岐にわたることが明らかになった。今回、個体に共通してみられた異常についてはヒト染色体断片の導入による遺伝的不均衡による可能性が極めて高く、これらの結果は異常の発症に関わる遺伝子の究明に役立つものである。しかし、種々の異常の度合いは個体によって異なっており、そのような個体差は胚幹細胞由来の細胞が各組織の形成に貢献している割合(キメラ率)が異なることによって生じていると考えられる。したがって、今後は例数を増やして詳細な組織学的検索を行う一方、DNA in situ hybridization法によって各組織におけるキメラ率を検討する必要がある。
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