2000 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜類似表面を構築する新規な医用ポリマーの合成と血液適合性発現機序の解明
Project/Area Number |
09480250
|
Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
石原 一彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (90193341)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 泰彦 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所・素材部門, 助教授 (90280990)
|
Keywords | 生体膜類似構造 / 医用ポリマー / 血液適合性 / MPCポリマー / 血小板粘着 / タンパク質吸着 / 自由水 / 表面 |
Research Abstract |
本研究は医療デバイスに要求される基本的な性質である血液適合性を付与するための新規医用ポリマーを、生体内のリン脂質分子の吸着状態をポリマーにより制御して生体膜類似表面を構築するという新しい概念に基づいて分子設計・合成することを目的とした。具体的には、リン脂質極性基を有するメタクリル酸エステル(MPC)を用いて新規ポリマーを設計、合成した。さらに材料としての安定性や造膜性に優れた分子構造を規定した。合成したMPCポリマーと血液との相互作用を細胞、タンパク質、リン脂質さらには水といった各階層ごとに分けて解析し、MPCポリマーの特性発現に重要な因子を探索した。MPCを一成分とするポリマーを、全体の親一疎水性バランス及びシークエンスについて考慮し合成した。既存の医療デバイスに対して被覆材あるいは添加材として利用することを目的に、溶解性、造膜性、分散性及び機械的強度などの材料特性に優れ、その表面が良好な血液適合性を発現できるようなポリマー構造を探索した。MPCポリマー中の水の構造についても、自由水分率の測定より議論した。In vitroにおいてウサギあるいはヒトの血漿及びタンパク質の単独溶液からのタンパク質の吸着、活性化反応を吸着成分の種類、分布、配向及び変性の観点から評価した。さらにこの検討をex vivo、in vivoに拡張して行ない血液との反応が温和なポリマー構造を特定した。これらの検討の結果、MPCポリマーは表面に多くの自由水を維持できるために、タンパク質と接触した際にその構造変化を抑制することが明らかとなった。これがタンパク質吸着を抑制する要因として重要であることを示すことができた。また、MPCポリマーを既存の材料に複合化させることにより、表面の血液適合性を大幅に改善できることが明らかとなった。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] T.Yomeyama,M.Ito,Y.Iwasaki K.Ishihara,N.Nakabayashi: "Small-Diameter Vascular Prostheis with a Nonthrombogenic Phospholipid Polymer Surface"Artf.Organs. 24・1. 23-28 (2000)
-
[Publications] K.Ishihara,Y.Iwasaki,S.Ebihara,N.Nakabayashi: "Photo induced Graft Polymerization of 2-Methacrylcyloxyethyl Phosphorylcholine on Polyethylene Membrane Surface"Colloid and Surfaces B:Biointerfaces. 18. 325-335 (2000)
-
[Publications] K.Ishihara: "New Polymeric Biomaterials-Phospholipid Polymers with Biocompatible Surface"Frontiers Med.Biol.Engng. 10・2. 83-95 (2000)
-
[Publications] 石原一彦: "生体構造に啓発されたポリマーバイオマテリアルの創製"生体材料. 18・1. 33-40 (2000)
-
[Publications] 石原一彦: "バイオミメティックハンドブック"長田,甲斐,嘉数,片岡,酒井,田中 編エヌ・ティー・エス. (2000)