1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09480253
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
由井 伸彦 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助教授 (70182665)
|
Keywords | ポリロタキサン / 生体内分解性高分子 / 薬物運搬体 |
Research Abstract |
本研究では、生休内分解性ポリロタキサンを利用して新しい薬物-高分子の結合様式を有するインテリジェント薬物運搬体の設計を目的として研究を展開している。本年度は、多数のα-シクロデキストリン(α-CD)の空洞部を貫通したポリエチレングリコール(PEG)の両末端に生体内分解性ペプチド基を導入したポリロタキサンの大量合成、擬生理環境下での溶液構造の解析及び生分解挙動の解析を行うとともに、モデル薬物であるテオフィリン(キサンチン誘導体)のポリロタキサン中α-CDへの導入を検討した。従来報告されているポリロタキサンの合成ではCDの脱離による低収率が問題となっていたが、本研究では両末端にアミノ基を有するPEGを用いたα-CDとの包接化合物とL-フェニルアラニン(L-Phe)のスクシンイミドエステルとの縮合反応を行い、α-CDの脱離を抑制しながら包接化合物へのペプチド基導入を可能にした(最大収率:40%程度)。さらには、得られたポリロタキサン中のα-CDをヒドロキシプロピル(HP)化し、極性溶媒への溶解性を改善することに成功した。ポリロタキサンの擬生理的環境下での光散乱測定によって、両末端にL-Pheを導入したPEGは密でコンパクトな会合体を形成するが、生体内分解性ポリロタキサンは密度の低い広がりをもった会合体を形成することが明らかとなった。ポリロタキサンでは、末端基の酵素分解とそれに伴うHP-α-CD放出が完全に進行していたが、両末端にL-Pheを導入したPEGでは分解が約50%までしか進行しなかった。これらのことから、L-Pheを導入したPEGでは密な会合により酵素-基質複合体の形成が抑制されたのに対して、ポリロタキサンでは、その密度の低い広がりを持った会合状態によって酵素-基質複合体の形成が抑制されず、酵素分解が完全に進行したものと考えられた。また、ポリロタキサン中のα-CDにテオフィリンを導入することに成功し、同様に末端基の分解による薬物-α-CD結合体の放出を確認した。以上の結果から、ポリロタキサンの超分子構造に基づいた新しい薬物放出を可能にする分子設計の基礎を確立することができた。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] W.Kamimura, T.Ooya,N.Yui: "Interaction of polyrotaxane with hairless rat stratum corneum" J.Controlled Release. 44. 295-299 (1997)
-
[Publications] 大谷 享、菅原広行、由井伸彦: "ポリロタキサン構造からなる超分子集合体と皮膚角質層との相互作用およびそのインドメタシン透過性への影響" Drug Delivery Systems. 12. 89-94 (1997)
-
[Publications] T.Ooya, N.Yui: "Synthesis and characterization of biodegradable polyrotaxane as a novel supramolecular-structured drug carrier" J.Biomater.Sci.Polym.Edn.8. 437-456 (1997)
-
[Publications] 大谷 享、由井伸彦: "生体内分解性超分子" 機能材料. 18・1. 56-67 (1998)
-
[Publications] N.Yui, T.Ooya, T.Kumeno: "Effect of biodegradable polyrotaxane on platelet activation" Bioconjugate Chem.9・1. 118-125 (1998)
-
[Publications] T.Ooya, T.Kumeno, N.Yui: "Regulation of intracellular metabolism by biodegradable polyrotaxanes" J.Biomater.Sci.Polym.Edn.9(印刷中). (1998)
-
[Publications] T.Ooya, N.Yui: "Advances in Polymeric Biomaterials Science" CMC,Tokyo,Japan, 686 (1997)