2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09480253
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
由井 伸彦 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 教授 (70182665)
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Keywords | ポリロタキサン / 薬物運搬体 / 超分子構造 / 酵素分解 / 非酵素的加水分解 / ヒドロゲル / 組織再生 |
Research Abstract |
本研究は、生分解性ポリロタキサンを利用した新しいインテリジェント薬物運搬体の設計を目的として展開してきた。これまでに、多数のα-シクロデキストリン(α-CD)空洞部を貫通したポリエチレングリコール(PEG)の両末端を嵩高い置換基(L-フェニルアラニンもしくはL-チロシルグリシルグリシン)をペプチド結合を介して導入し、その酵素分解に伴う超分子構造の解離を新しい薬物放出機構として提唱してきた。最終年である平成12年度では、酵素分解におけるポリロタキサン超分子構造の寄与を明らかにするとともに、組織工学の研究領域において重要視されている組織再生の足場としてのヒドロゲルを調製し、そのポリロタキサン超分子構造によるヒドロゲル分解への影響とその機構について検討した。ポリロタキサンの両末端基としてL-フェニルアラニルグリシルグリシン(FGG)を導入し、細胞膜表面に結合したペプチド分解酵素であるアミノペプチダーゼMの触媒作用により末端FG間のペプチド結合が加水分解されるようにした。この酵素はN末端のアミノ基を認識して触媒作用を示すため、通常オリゴペプチド(分子量:1000程度)までしか基質とならないことが知られている。事実、両末端にFGGを導入したPEG(分子量2000)のアミノペプチダーゼMによる分解は、約20%であった。しかし、ポリロタキサンの場合は完全に分解した。このことは、PEG両末端のFGGが生理的環境下にて会合してアミノペプチダーゼMの接近を抑制しているが、多数のα-CD空洞部がPEG鎖を貫通することにより末端FGGの会合が解消された効果であることが明らかとなった。この成果は、薬物運搬体が特定の細胞表面にて分解する新しい材料設計を可能にするものと期待できる。 一方、ポリロタキサンの嵩高い末端基をエステル結合を介して導入すると、非酵素的な加水分解により超分子構造が解離することを明らかにしてきた。この特徴に基づき、ポリロタキサン中のα-CD水酸基とPEGとを架橋したヒドロゲルを調製し、その分解・消失挙動を解析した。PEGの導入量を増大させると含水率は大きくなったが、ヒドロゲルの完全消失時間は長くなった。これまでの分解性高分子鎖を化学架橋したヒドロゲルでは、含水率の増大に伴ったエステル結合への水の浸入が容易になることから分解・消失時間が短くなる。これらのことから、ポリロタキサンの超分子構造が末端エステル結合の加水分解を抑制していることが考えられた。PEGの化学修飾によりα-CD水酸基間の水素結合が消失し、α-CDが末端エステル結合を包接した結果、水の浸入を抑制した効果であると考えられる。このような機能は、親水的条件下にて数ヶ月以上組織再生の足場を必要とする材料の要求を満たすものといえる。 以上より、生体内分解性ポリロタキサンの超分子構造が薬物運搬体のみならず組織再生の足場の設計にも有効であることを、本研究を通じで提唱することができた。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] T.Ooya,K.Arizono,N.Yui: "Synthesis and characterization of an oligopeptide-terminated polyrotaxane as a drug carrier"Polym.Adv.Tech.. 11(8-12). 642-651 (2000)
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[Publications] J.Watanabe,T.Ooya,N.Yui: "Feasibility study of hydrolyzable polyrotaxanes aiming at implantable materials"J.Artif.Org.. 3(2). 136-142 (2000)
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[Publications] J.Watanabe,T.Ooya,K.D.Park,Y.H.Kim,N.Yui: "Preparation and characterization of poly (ethylene glycol) hydrogels crosslinked by hydrolyzable polyrotaxane"J.Biomater.Sci.Polym.Edn.. 11(12). 1333-1345 (2001)
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[Publications] T.Ooya,M.Eguchi,N,Yui: "Enhanced accessibility of peptide substrate toward a membrane-bound metalloexopeptidase by supramolecular structure of polyrotaxane"Biomacromolecules. ASAP on Web. (2001)
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[Publications] T.Ichi,J.Watanabe,T.Ooya,N.Yui: "Controllable erosion time and profile in poly (ethylene glycol) hydrogels by supramolecular structure of hydrolyzable polyrotaxane"Biomacromolecules. ASAP on Web. (2001)
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[Publications] 由井伸彦,大谷亨: "超分子構造を有する生医学高分子材料の分子設計とインテリジェント機能"化学と教育. 48(11). 728-731 (2000)
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[Publications] K.D.Park,I.C.Kwon,N.Yui,A.Y.Jeong,K.Park, Eds: "Biomaterials and Drug Delivery toward New Millennium"Han Rim Won Publishing Co.,Seoul. 683 (2000)
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[Publications] 由井伸彦,大谷亨: "バイオミメティックスハンドブック(長田義仁:編集)"新しい生分解性高分子による薬物送達システム、エヌ・ティー・エス. 803-812 (2000)