1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09552002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井 政和 九州大学, 法学研究科, 教授 (30188841)
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Keywords | 更生保護 / 社会内処遇 / 被害者 / 中間処遇 / 電子監視 / 加害者被害者和解 / 損害回復 / 公益労働(社会奉仕命令) |
Research Abstract |
平成11年度は、第一に、わが国における更生保護関係諸法改正にあたって論点となる事項につき検討を行った。その概要は、「更生保護への期待」(更生保護第50巻1号、1999年1月)にまとめている。刑事法における社会防衛重視の傾向が世界的に見られるなか、更生保護領域においても「福祉的援助」よりも「コントロール」重視に基づく施策が制定あるいは検討されている。そこで、新しい論点として、対象者の法的地位、更生保護施設の処遇施設化(中間施設化)、更生保護と被害者援助の関係などが生まれていることを指摘した。第二に、社会内処遇の比較研究として、ドイツにおける最近の動向について紹介し、わが国が教訓とすべき論点について検討した。その成果は、「世界の刑事思潮から見た更生保護の将来-ドイツにおける最近の動向を中心として-」(『更生保護の課題と展望-更生保護制度施行50周年記念論文集-』1999年12月)に掲載されている。「電子監視による在宅拘禁」「加害者被害者和解」「損害回復」「公益労働(社会奉仕命令)」などが施設内処遇に代わる代替策としてのみならず、独自の社会内制裁として位置づけらようとしていることをドイツの最近の立法や実務の動きの中から折出した。立法上の論点として、社会内制裁を「第三の制裁」と構成することの可否、社会内処遇の担い手における役割衝突の先鋭化・顕在化、社会内処遇対象者の法的地位、社会内処遇の組織的統合及び協力体制の強化、社会内処遇における被害者の観点について検討した。結論として、将来の更生保護のあるべき方向は、社会内制裁の方向ではなく、対象者の社会復帰のための福祉的任務の強化並びに民間の自助組織やボランティア団体などとの相互協力の促進にあることを指摘した。
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