1997 Fiscal Year Annual Research Report
反陽子パルスビームを用いた反陽子原子分光のための測定器開発
Project/Area Number |
09554018
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早野 龍五 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30126148)
|
Keywords | エキゾティック原子 / 反陽子 / レーザー分光 / CERN / 低速反陽子ビーム / CPT対称性 / 反陽子減速器(AD) / 反陽子ヘリウム原子 |
Research Abstract |
平成10年末にCERNに完成予定の反陽子減速器(AD)を用い、反陽子ヘリウム原子の各種精密光分を行うべく、実験装置や実験原理及びCERNにおける実験環境に関する準備を行った。 1)パルス反陽子ビームを用いた分光を行うためには、短時間(マイクロ秒以下)におこる大量な反陽子消滅の時間スペクトルを測定可能な、特殊な反陽子消滅検出装置が必要である。特に、ビーム入射の100nsの間に起きる瞬時消滅の影響をいかに押さえるかが問題であった。我々は浜松ホトニクスと共同でファインメッシュ・ダイノードの光電子増倍管をゲート動作させることで、ADで使用可能な消滅検出器の開発に成功した。 2)昨年までに我々が収集した反陽子ヘリウム原子のレーザー共鳴のデータを解析し、これを理論計算と比較することにより、反陽子原子のRydberg定数を数ppmの精度で決定することに成功した。これは、現在知られている値よりも1桁以上高精度である。 3)ADにおける詳細な実験計画を策定し、CERNの実験審査委員会に提出して審査を受け、AD完成直後から実験を実施することを認定された。この実験は、i)反陽子ヘリウム原子の高精度レーザー分光を行い、反陽子原子のRydberg定数を0.1ppm以下の精度で決定すること、ii)反陽子ヘリウム原子のレーザー・マイクロ波三重共鳴実験を行い、反陽子の磁気能率をppmの精度で決定すること、の二つを当面の大きな目標としている。上記の消滅検出器は、この双方を実施するために必要なものである。これに加え、レーザーの選定、マイクロ波共鳴のためのキャビティーの設計、CERN研究所における実験安全審査等、実験実施に必要な様々な準備を行いつつある。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Hayano他: "ATOMIC SPECTROSCOPY AND COLLISIONS USING SLOW ANTIPROTONS" CERN/SPSC. P-307(AD-3). 1-75 (1997)
-
[Publications] E.Widmann他: "Hyperfine Structure of the metastable pbar-He atomcule revealed by a laser-induced (n,1)=(37,35)→(38,34)transition" Phys.Lett.B404. 15-19 (1997)
-
[Publications] H.A.Torii他: "Instrumentation for laser-induced annihilation spectroscopy of metastable antiprotonic helium atoms" Nucl.Instr.Meth.A396. 257-271 (1997)
-
[Publications] B.Ketzer他: "Hydrogen-assisted laser-induced resonant transitions between metastable states of antiprotonic helium atoms" Phys.Rev.Lett.78. 1671-1674 (1997)