Research Abstract |
本研究は,,原生生物を対象に,核DNAの塩基配列を解析して,環境指標種の遺伝子データベースを作ることを目的としている。そのために,環境指標となりうる原生生物のDNA解析を行い,DNAによる種カタログを作ることを第一の目標とする。その後,それぞれの種の環境情報データと組み合わせ,DNA塩基配列に基づいた生物環境調査支援システムを構築する。平成11年度は次のような研究を行った。1)平成10年度に引き続き,環境指標種になりうる原生生物種の個体群を確保することを目指した。資料採集は,浜名湖・下田湾・小湊湾で行った。有孔虫は内湾種のうち,低溶存酸素環境の指標であるAmmonia beccarii forma 1,forma 2,Bulimina marginata/aculeata,富栄養化の指標である Trochammina hadai を重点に解析した。とくに,T.hadaiは,個体群内での遺伝的な変異を検討するために,一ヶ所で多くの個体を解析するように心がけた。また,岩礁地の Glabratella属についても解析した。2)飼育培養した原生生物,6種80固体からDNAを抽出した。DNAは原生生物に特異的に働くプライマーを用いてPCRを行い,増幅した。増幅部分は,核DNAのうちリボゾームをコードする,LSUrDNAの約1200塩基対,SSUrDNAの約1000塩基対およびITS領域である。PCR産物は精製し,cloningを行ったのち,sequencingした。3)DNA解析に用いた種類は,低真空走査型電子顕微鏡を用いて形態的な特徴を把握するとともに,写真を撮って記録した。4)DNA解析結果は,パーソナルコンピュータに保存し,データベースを作った。5)上記の有孔虫種については,自然個体群の経年観察および飼育実験の結果を解析し,温度・塩分・溶存酸素量などの環境要素に対する生理・生態的な特性を把握するとともに,形態異変と環境との相関についてもまとめた。6)以上のデータを総合して,生物環境調査支援システムを構築した。
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