Research Abstract |
本年度は,高圧実験試料の予備測定と解析ソフトの運用法を中心に研究が進められた. プロトンマイクローブは,隕石・高温高圧実験試料など貴重試料の非破壊定量分析として有用であるが,分析上の問題点を洗い出すため,既に開発した試料室を用いて高温高圧実験試料を測定した.タンデトロン加速器は調整中なので,大型加速器による4MeVのプロトンビームを利用し,ビームサイズ60μmx30μm,電流値2.5nAの条件で分析した.軽元素と重元素を同時分析するため,フィルターなしの軽元素測定用検出器と厚さ150μmのアルミ吸収体を取り付けた重元素測定用検出器を試料室に設置した.測定時間は1ポイントあたり30-60分である.測定に使用した高圧合成試料は,グラファイトカプセル中に玄武岩(JB-1b)の粉末と5%の水を入れ,7.7GPa,2000℃の条件で30分間保持したもので,無機材質研究所の高圧プレスを用いて合成された.玄武岩粉末は急冷結晶となっており,グラファイトカプセルの一部はダイヤモンドになっている.測定の結果,玄武岩の部分では,出発試料の組成を反映したスペクトルが観察されたが,それ以外にもClの強いピークが観察された.このClは,静水圧性を計るためにグラファイトカプセルの周囲に置かれたNaClに起因するもので,軽元素の測定によって周囲からの汚染の有無を明らかにできた.また,この測定では,厚い炭素蒸着を施したために,Siよりも軽い元素の強度が期待されるよりも小さく,軽元素測定のためには炭素蒸着を薄めにすることが重要であることが分かった.炭素の部分では,V,P,Sc以外の全ての元素が観察され,この結果が,玄武岩の混入によって生じたものでないとすると,炭質物にはNa以上の不純物がかなりの濃度で存在することになり,天然のダイヤモンドに多く含まれるグラファイトと比較することによって,ダイヤモンドの形成に関する豊富な情報を得られる可能性がでてきた. ゲルフ大学から購入した解析ソフ卜については,現在,定量分析に必要な装置定数の決定法を研究中である.
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