Research Abstract |
近年の外科手術においては,患者に過大の肉体的負担をかけず,術後回復の早い無侵襲治療法が注目されている.本研究は,レーザ照射加熱と表面冷却法を併用し,組織表面を切断することなく深部病変を凝固治癒する新しい治療法の開発を目指し,基礎的ならびに動物実験を行っているものである.レーザ照射加熱ではレーザ光の組織透過性,すなわち組織吸収性が肝要であることから,まず,食肉を用いた実験によって計測システムを確立し,その後,豚の胃の各種組織,血液に対しレーザ吸収係数を測定,データを蓄積した.次に,このデータを基に熱解析を行い,食肉の焼灼実験をおこない,本治療法原理の有効性を確かめた.この実験的および理論的研究の過程で,組織を予冷却しておくことが組織深部を焼灼凝固するのに有効なこと,間欠照射をすると組織の焼灼温度をコントロールし易いことなどが判明した.こうした基礎実験の成果をふまえ,次に,動物実験のためのハンディな照射機器を設計製作し,豚の胃を対象として,数回にわたり動物実験を行った.食肉の場合と異なり,実際の胃組織は部位によって厚さが異なること,照射機器の保持や温度計測が離しいことなど,幾多の難問に遭遇したが,一応の解決をみて,データが蓄積されつつある.そして現在は,照射後も豚を保育し経過観察を行うに至っている.本研究は研究期間3年の内の2年目であり,動物実験であるため研究は遅々とした面もあるが,しかし医学者,工学者,技術者の連携のもとに着実に進んでおり,研究最終年の来期には所期の目的は達成できると考えている.
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