1997 Fiscal Year Annual Research Report
6、000気圧の超高圧下で動作する走査型トンネル顕微鏡の試作開発
Project/Area Number |
09555101
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
甲斐 昌一 九州大学, 工学部, 教授 (20112295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡部 弘高 九州大学, 工学部, 助手 (90221142)
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Keywords | 6000気圧 / 超高圧STM / 液晶 / フラーレン / 非平衡物性 / 相転移 |
Research Abstract |
本研究では、高圧下における原子・分子レベルでの物性計測を可能にする超高圧走査プローブ顕微鏡(SPM)の開発を行い、それを新しい物性測定や非平衡物理計測に応用することを目指している。特に、現在、液晶の相転移に伴う単分子膜の配列構造を研究するための超高圧走査トンネル顕微鏡(STM)の開発を続けており、4000気圧までのSTMは完成済みである。このSTMによって、液晶の相転移やフラーレンの相転移の直接観測を試みたが、バルクに対して予測されていた圧力では転移現象が観測されなかった。これは、単分子膜あるいは界面吸着構造膜では、バルクの性質とは異なった状態にあるためと考えられる。そこで、現在さらに高圧を目指して6000気圧のSTMへの改良を行っており、その部品の作製や設計は既に終わり現在組立と調整に入っている。なお、この開発と並行して行われている研究で幾つか新しい成果が得られている。その一つは、3500気圧の高圧下で初めてフラーレン(C_<60>とC_<70>)の配列が観測され、その格子定数が3500気圧までほとんど変化していないのが確認された。また、液晶分子の相転移には、偶奇性が観測されることが知られているが、HOPG上の配列構造の直接観測からその配列機構と偶奇性の問題を調べた。その結果、アルキル鎖の炭素数が奇数の場合にはシングルロウ、偶数ではダブルロウ構造が観測され、これはアルキル鎖末端と基板との相互作用が奇数と偶数で大きく異なるためと推測される。この観測に基づくと従来理論的に得られている配列とは異なり、アルキル鎖のプラナジグザク面が基板に垂直になって配向するものと解釈され、またこの構造は圧力印加によって強く影響を受けるものと考えられる。以上の成果は、高圧下における相転移の直接観測および解析などに際して、重要な側面サポートとなると期待される。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 相良和彦: "シアノビフェニル系液晶混合物の二硫化モリブデン基板上での配列構造のSTM観察" 九州大学工学集報. 70-2. 121-6 (1997)
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[Publications] Tsutomu KADOTANI: "Mixture Alignments on Graphite Substrates in Cyanobiphenyl Liquid Crystals Observed using Scanning Tunneling Microscopy" Jpn.J.Appl.Phys. 36-7A. 4440-5 (1997)