Research Abstract |
本研究では,京都大学防災研究所の波浪・漂砂観測桟橋を利用して,2年間の計画で,高周波ADCP,FC型流速計,濃度計による砕波帯内での流れの場,漂砂濃度の鉛直分布の比較観測を行い,ADCP観測により得られた3次元流速分布およびエコー強度データから,流速分布,浮遊漂砂濃度,砕波による気泡連行過程の観測を行うための基本的な変換情報を明確にする。これにより,ADCPの単独観測から流速分布,浮遊漂砂濃度,砕波による気泡連行過程の観測を行う方法を開発する。 (A)冬期高波浪時の砕波帯内での海浜流,漂砂量ベクトルの鉛直分布の比較観測:平成9年12月26日から平成10年3月9日の間に,京都大学防災研究所の波浪・漂砂観測桟橋において,1200kHzのADCP(WorkHorse,申請備品)を海底に設置し,海浜流,エコー強度の鉛直分布の連続観測を行った。現有の計測機器(波高計7台,RC型流速計1台,超音波風速計1台)に加え,砂面計2台,光学式濃度計(鉛直方向へ移動可)による観測も並行して行った。 (B)観測データの解析:これらの連続観測から,海浜流特性および海底地形変化特性として以下の成果が得られた。 ○海浜流特性として,(1)沿岸流は風による影響を強く受けており,主に吹送流により形成されている。その鉛直分布は極めて安定で,やや下層が早いほぼ一様分布をしており,沿岸流は発達した吹送流であると推測される。(2)一方,岸沖方向の流れの鉛直分布は安定で,沿岸流の流向が変化する場合でも大きな変化は無い。沿岸流が安定な場合には,トラフレベル下で下層が早い沖向きの流れで,トラフレベル上ではそれに見合う岸向きの流れとなっている。 ○海底地形変化特性としては,(3)海底地形の侵食変形過程は,復元性侵食と弱可逆性侵食とに分類され,弱可塑性侵食は沿岸流が一方向に偏って長期間生じた場合に発生することが明らかにされた。
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