Research Abstract |
本研究は,C60の生物的機能,特に酵素的機能に着目し,水溶性で安定なC60/γ-シクロデキストリン1対2型包接体(Bicapped-C60)の効率的構築法を確立し,このBicapped-C60の錯体特性および人工ニトロゲナーゼ的特性について鋭意検討した。 Bicapped-C60の分子設計:人工ニトロゲナーゼ的機能の研究を行うためには,C60の特性を保持したまま水溶性にする必要があるため,γ-シクロデキストリンを用い,2箇所の疎水場(反応中心)を有するBicapped-C60(C60/γ-シクロデキストリン1対2型包接体)の構築を行った。 Bicapped-C60の構築:C60を含むトルエン溶液とγ-シクロデキストリン水溶液の2層系で48時間,加熱・環流を行うことにより,Bicapped-C60が水層に紫色沈澱物として得られる。次に,Bicapped-C60懸濁水溶液に窒素ガスを約15分間吹き込むことにより,Bicapped-C60を徐々に溶解させ,ろ過後ろ液の凍結乾燥を行い,紫色の水溶性Bicapped-C60を定量的に得た。 Bicapped-C60の物性および機能:人工ニトロゲナーゼ的機能発現を研究していく上で,極めて重要な電子供与体(還元剤)からBicapped-C60のC60への電子移動について,電子スペクトルを用いて詳細に検討した。電子供与体として亜ニチオン酸ナトリウム(Na2S204)を,電子移動のメディエーターとして酸化鉄(II),18-クラウン-6/Fe^<2+>錯体(水から生成したものとエタノールから生成したものとの2種類)を用いたところ,いずれの場合も効率的なC60^<1->およびC60^<2->の生成が確認できた。そこで今度は,Bicapped-C60の二つの疎水場を反応場として,電子供与体からの電子移動により生成したC60^<1->およびC60^<2->に配位した窒素への電子移動が効率的に起これば,プロトンとの作用で効率的にアンモニア(NH3)が発生するであろうと期待した。そこで,Bicapped-C60を触媒として,水溶液中窒素ガスの存在下で上記反応条件下,窒素固定の研究を展開させたところ,アンモニア(NH3)の発生が確認出来た。現在は,より効率的にアンモニア(NH3)を発生させるための反応条件の最適化(turnoverの向上に関する研究)に取り組んでいる。 なお,これら詳細については,The 2nd International Forum on Chemistry of Functional Organic Chemicals (IFOC-2),November 17-18,1997,Tokyo,Japan,Abstr.Poster-50 (p.80)で報告した。
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