1998 Fiscal Year Annual Research Report
越冬昆虫の耐寒性機構における休眠および糖類、遊離アミノ酸の役割
Project/Area Number |
09556011
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
後藤 三千代 山形大学, 農学部, 助教授 (10007081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 幸一 岩手大学, 農学部, 教授 (20003791)
五十嵐 喜治 山形大学, 農学部, 教授 (00111336)
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Keywords | アワノメイガ(Ostrinia furnacalis) / 越冬幼虫 / 耐寒性 / 休眠 / 無酸素条件 / グリセロール / アラニン / 馴化温度 |
Research Abstract |
多くの越冬昆虫は冬に糖類とともにアラニン含量を低温下で上昇させ、耐寒性を高めることが知られているが、耐寒性機構を解明するうえで、アラニンの性質と役割を明らかにすることが重要となっている。そこで野外(3月)のアワノメイガ越冬幼虫を7温度条件(-15℃〜15℃)、2酸素条件(有酸素、無酸素)下で馴化し、耐寒性、グリセロールおよびアラニン含量を調べた。その結果、耐寒性は5〜-15℃下で、無酸素区(6割以下)に比べ有酸素区(9割以上)で高く、グリセロール含量は無酸素区の90〜170 umol/mlに比べ、有酸素区の180〜270umol/mlで高く、両者は一致した傾向を示し、グリセロールは耐寒性を制御している可能性が高い。一方、血液中から35種類の遊離アミノ酸が検出され、このうち、セリン、アラニン、プロリンは濃度的に大きな割合を示したが、低温下で増大したのはアラニンだけであった。アラニンは、無酸素区において、温度に関わらず30umol/ml前後と高い一定値を示したのに対し、有酸素区は低温下で高まる傾向を示したことから、低温下のアラニン含量の増大は低温による呼吸低下の影響と推定され、耐寒性を制御する物質である可能性は低いことが分かった。 アワノメイガ越冬幼虫の休眠は冬に浅くなるが、呼吸量の高まり、グリセロール含量の増大、アラニン含量の低下により、耐寒性を強めているといえる。今後、休眠期に冬を迎える昆虫の休眠と耐寒性の関係について、耐寒性物質と関わらせて研究を進める予定である。
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