MMP及びTIMPの遺伝子発現制御よる悪性腫瘍の基底膜浸浸潤・転移の抑制法の開発

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09557124
• Research Institution: Kyushu University
• Principal Investigator: 岩本 幸英 九州大学, 医学部, 教授 (00213322)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 小田 義直 九州大学, 医学部, 助手 (70291515)
• Keywords: 骨肉腫 / 転移 / 浸潤 / 運動 / TNFα / NF_kB / 多剤耐性 / RhoA

Research Abstract

TNFαは転写因子AP-1やNF_κBを介して遺伝子発現に関与することが知られている。しかし、腫瘍細胞の基底膜浸潤および転移における細胞内シグナル伝達機構については殆ど知られていない。我々の検討結果より、TNFαが一部のヒト骨肉腫細胞株において基底膜浸潤能を亢進させることが明らかになった。そこで我々は、NF_κBの活性化を抑制することが知られている、N-acetyl-L-cysteine(NAC)およびpyrrolidine dithiocarbamate(PDTC)を用いて、TNFαによる基底膜浸潤能の亢進におけるNF_κBの関与を検討した。まず、基底膜浸潤を構成する3段階、すなわち接着、基質分解、運動における、TNFαの影響をそれぞれattachment assay、zymography、chemotaxis assayを用いて評価したところ、いずれの段階も亢進していた。次に、TNFαによるNF_κBの活性化および核移行は、NACあるいはPDTCの前投与により阻害されることを確認した。さらに、TNFαにより亢進する基底膜浸潤能はNACあるいはPDTCの前投与により濃度依存性に抑制された。NACおよびPDTCはTNFαにより亢進する腫瘍細胞の接着能、基質分解能には影響を及ぼさなかったが、運動能は濃度依存性に抑制されていた。以上の結果より、TNFαによるNF_κBを介したシグナル伝達機構が、骨肉腫細胞株の運動能ひいては基底膜浸潤能を亢進させると考えられた。
さらに我々は、多剤耐性骨肉腫細胞株を樹立し、その転移、浸潤能について検討した。耐性細胞株では細胞骨格制御に関与する低分子量GTP結合蛋白質RhoAの過剰発現を認め、運動能の低下の結果、転移、浸潤能はむしろ低下していた。

Research Products

• [Publications] Saito T: "Lymphangioma Presenting as a dumbbell tumor in the epidural space of the lumber spine." Spine. 24(1). 74-76 (1998)
• [Publications] Oda Y: "Nuclear expression of YB-1 protein correlates with P-Glycoprotein expression in human osteosarcoma." Clinical Cancer Research. 4. 2273-2277 (1998)
• [Publications] Shono T: "A new synthetic matrix metalloproteinase inhibitor modulates both angiogenesis and urokinase type plasminogen activator activity." Angiogenesis Research. in press. (1998)
• [Publications] 斎藤太一: "仙骨脊索腫に対する手術症例の検討" 西日本脊椎研究会誌. 24(2). 187-190 (1998)
• [Publications] 松田秀一: "切除不能な仙骨、骨盤部発生の原発性悪性腫瘍に対する治療" 西日本脊椎研究会誌. 24(2). 218-221 (1998)
• [Publications] 播广谷勝三: "PBSCT(末梢血幹細胞移植)" 整形外科. 49(2). 154- (1998)
• [Publications] 岩本幸英: "癌の骨転移の機序・診断・治療" リウマチ関節外科学会雑誌. 17(2). 89-98 (1998)
• [Publications] 岩本幸英: "骨軟部腫瘍の基礎研究における最近の進歩" Pharma Medica. 16(12). 59-66 (1998)
• [Publications] 小田義直: "骨肉腫におる転写因子YB-1蛋白の発現" 骨・関節・靱帯. 11(12). 1499-1501 (1998)
• [Publications] 岩本幸英: "骨・軟部悪性腫瘍診療における最近の話題" 先端医療. 5(4). 32-35 (1998)
• [Publications] 岩本幸英(分担執筆): "今日の治療指針1999年度版" 医学書院, 3 (1999)
• [Publications] 岩本幸英: "整形外科最新の治療" 南江堂(印刷中), (1999)
• [Publications] 岩本幸英(分担執筆): "今日の整形外科治療指針" 医学書院(印刷中), (1999)