1998 Fiscal Year Annual Research Report
咀嚼運動の中枢神経機構解析のための in vitro 標本の開発
Project/Area Number |
09557143
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中村 嘉男 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (10010026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 美鈴 東京医科歯科大学, 歯学部, 教務職員 (00262204)
片倉 信郎 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (20185804)
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Keywords | 咀嚼 / リズム / in vitro / 遊離脳幹 / 顎運動 / マウス |
Research Abstract |
本研究は、咀嚼運動の誘発が可能な成熟動物のin vitro標本を開発することを目的とする。昨年度の研究は、成熟マウスの遊離脳幹脊髄標本のニューロン活動を、記録槽への95%O_2-5%CO_2で飽和した人工脳脊髄液の灌流と、同一の人工脳脊髄液の循環系を介する脳への持続的注入の併用によって維持している条件で、橋錐体路の連続電気刺激によって、咬筋および顎二腹筋に咀嚼運動様のリズミカルな相反性の筋電図活動を誘発することに成功した。しかし、標本の活動維持に循環系を介する酸素供給を必要とすることは、この標本の重大な欠点であり、脳幹に切断を加えて、三叉神経運動ニューロンのリズミカルな活動誘発に必要不可欠の部位を同定し、灌流液からの酸素拡散だけで活動を維持できる脳幹の標本を作成する必要がある。それにはまず、三叉神経運動ニューロンのリズム活動のリズム発生器の脳幹における局在部位を明らかにしなければならない。 そこで今年度は、摂食運動に関与する顎・顔面・舌の筋を支配する三叉・顔面・舌下神経運動ニューロンのリズム活動が、単一のリズム発生器によって誘発されるのか、あるいは、それぞれ別個のリズム発生器によって誘発されるのかを明らかにする目的で、マウスの新生仔のin vitro遊離脳幹標本を用いて検討した。 新生仔の遊離脳幹では、NMDAの灌流液中への投与によって、三叉神経運動根、顔面神経、舌下神経にそれぞれ異なった周期のリズム活動が誘発され、これらの活動は、三叉神経と顔面神経との間および顔面神経と舌下神経との間のレベルで脳幹を前頭断しても残存した。このことは、三叉・顔面・舌下神経運動ニューロンのリズミカルな活動誘発に関与するリズム発生器はそれそれ別個で、それぞれ三叉神経運動核、顔面神経核、舌下神経核のレベルの脳幹に吻尾方向に分節上に配列されていることを意味している。この知見は、成熟動物における咀嚼のリズム発生器だけを含む脳幹標本の開発に重要な基礎的データを提供するものである。
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