Research Abstract |
茜草根(Rubia cordifoliaの根)より得られた抗腫瘍活性環状ヘキサペプチドRA-VIIは臨床試験において,有効域と毒性域との接近,注射剤としての水溶性改善などの難点が指摘されており,この点を克服するためにRA系化合物への化学修飾の試みを行なっている.すなわち,今年度は活性を失うことなく,水溶性を高めることが期待される誘導体として,RA-VIIの構成アミノ酸残基Tyr-6のフェール性水酸基の各種2-ジアルキルアミノエーテル誘導体を調製し,そのin vitro,in vivo活性試験を検討した.この結果,特に2-ジイソプロピルアミノエーテル誘導体では,マウスP388白血病,B16メラノーマ,Colon26腫瘍に対して,RA-VIIよりも有望な活性を示し,その塩酸塩は水に可溶であった.本化合物については,今後,臨床への可能性について検討して行きたい.また,現在までの活性試験の結果より,抗腫瘍活性環状ヘキサペプチドRA類に特徴的な環状イソジチロシン構造が活性に必須であることが推測されるが,その合成的供給の困難さより,RA-VIIからの効率的なシクロイソジチロシンへの変換法の確立をめざしている.このシクロイソジチロシンと各種テトラペプチド類を縮合・環化して新規RA類を合成し,活性発現部位のトポロジーの解明を行っている. また,茜草根以外における新規生理活性ペプチド類の探索研究の結果,ナデシコ科の王不留行Vaccaria segetalis種子より,エストロゲン様活性環状ペプチドsegetalin類を単離,構造決定することができた.本化合物についてはチオアミド化誘導体をも調製し,コンホメーションと活性発現の関係について考察を行った.また,亜麻仁Linum usitatissimum種子より新規免疫抑制環状ペプチドcyclolinopeptide類を単離,構造決定することができた.これらの活性の詳細については,現在,検討中である.その他,Stellaria属,Leonurus属植物からも環状ペプチド類を単離,構造決定することができた.
|