1998 Fiscal Year Annual Research Report
p53遺伝子の変異した肝癌を標的とした遺伝子治療ベクターの開発
Project/Area Number |
09558096
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
小池 克郎 癌研究會, 癌研究所・遺伝子研究施設部, 部長 (30085625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 修一 明治乳業ヘルスサイエンス研究所, 課長研究員
林 恭行 癌研究會, 癌研究所・遺伝子研究施設部, 研究員 (90198862)
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Keywords | 癌抑制遺伝子p53 / ヒト肝癌 / 遺伝子治療ベクター / HBV・X遺伝子 / HCV・コア遺伝子 / プロモーター / 細胞死 / 転写カセット |
Research Abstract |
日本人の肝癌では、癌抑制遺伝子p53遺伝子の変異が30%前後あることが報告されている。本研究は、このp53遺伝子が変異したヒト肝癌を標的とした遺伝子治療ベクターの開発を目的としている。その為に、p53遺伝子が変異した細胞でのみ増殖できるようにしたアデノウイルス(Ad)と、p53遺伝子が変異した肝癌細胞でのみ高発現する遺伝子のプロモーター/エンハンサーの下流に細胞死に関連した遺伝子のコード領域を挿入した転写カセットをAdベクターに挿入し、その目的を達成させるベく研究を行った。 我々の研究から、B型肝炎ウイルス(HBV)X遺伝子のプロモーター(Xpr)は、p53遺伝子が正常な肝細胞では殆ど発現せず、p53遺伝子が変異した肝細胞でのみ高発現することが分かった。そこで、このXprの下流に細胞死に関係している遺伝子cDNAを挿入した転写カセットを作成して発現させれば、p53遺伝子の変異した肝癌細胞が細胞死に至ることが期待される。本年度は、このXprプロモーターを用いた転写カセットを作成することを試みた。 細胞死関連遺伝子として、HBVのX遺伝子およびC型肝炎ウイルス(HCV)のコア遺伝子のコード領域を用いた。X蛋白質は転写活性化因子として知られているが、最近の我々の研究から細胞傷害性因子であることも明らかになった。それ故、細胞死に関係した部分を解明することをまず行った。その結果、X蛋白質の中央領域が細胞死に特異的に関係することを明かにした。また、コア蛋白質に関しては、N末端側の領域が重要であることを明かにした。現在、p53遺伝子が正常の細胞(HepG2やNIH3T3)およびp53遺伝子が変異した細胞(HuH7)を用いたDNA感染実験を行っている。しかし、これらのカセットをAdベクターに挿入する前に、これら遺伝子の発癌性について詳しく研究することが重要であると考えている。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] K.Koike: "HBV DNA integration and insertional mutagenesis" In “Hapatitis B virus : Molecular Mechanisms in Desease and Novel Strategies for Therapy"(R.Koshy and W.H.Caselmann eds.). 133-160 (1998)
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[Publications] K.Koike, et al.: "Hapatitis B virus DNA is frequently found in the liver biopsy samples from hapatitis C virus-infected chronic hepatitis patients" J.Med.Virol.54. 249-255 (1998)
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[Publications] N.Nakamichi, et al.: "Characterization of an antigen-producing cell line huGK-14 at the molecular level" Animal Cell Technology : Basic & Applied Aspects. 9. 51-57 (1998)
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[Publications] T.Shimazu, et al.: "Post-transcriptional control of the level of mRNA by hepatitis B virus X gene in the transient expression system using human hepatic cells" Genes to Cells. 3. 477-484 (1998)
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[Publications] Y.Hayashi, et al.: "A cellular factor bound to the end of linear double-stranded HBV DNA is identical to octamer binding protein 1" In “Molecular Biology of Hapatitis B Viruses". 30-30 (1998)
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[Publications] Y.Shirakata, et al.: "HBV X protein is found to be localized in mitochondria" In “Molecular Biology of Hapatitis B Viruses". 91-91 (1998)
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[Publications] 小池克郎: "HBVと肝発癌" 現代医療. 30. 645-650 (1998)
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[Publications] 小池克郎: "HBVX遺伝子と肝発癌" 臨床消化器内科. 13. 1465-1471 (1998)
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[Publications] 小池克郎: "B型肝炎ウイルス(HBV)" 「がん遺伝子・癌抑制遺伝子」(澁谷正史・山本雅編). 273-279 (1998)
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[Publications] 小池克郎: "B型肝炎ウイルスによる肝発癌" 医学のあゆみ. 187. 999-1003 (1998)
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[Publications] 小池克郎: "ウイルス" 「臨床腫瘍学」(日本臨床腫瘍研究会編). 38-47 (1998)
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[Publications] 小池克郎: "HCVとHBVの重感染と肝発癌リスク" 日本臨床. 57. 213-219 (1999)