1997 Fiscal Year Annual Research Report
「新しい現象学」の視点からみた雰囲気と集合心性についての研究
Project/Area Number |
09610008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 侃 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60065878)
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Keywords | 「新しい現象学」 / 集合心性 / 集合表象 / シュミッツ / 身体 / 感情 / 雰囲気 / 「気」 |
Research Abstract |
初年度においてまずヘルマン・シュミッツの現象学における身体・感情・雰囲気の概念を再検討し,「意識」のシュミッツ的意味を明らかにして,集合心性の現象学の体系化の基礎を築いた。ヘルマン・シュミッツの身体と感情の概念を現象学的な観点から根本的に検討し,感情を主観・客観関係を越えた深い次元において把握することにつとめた。シュミッツの『哲学体系』10巻や初期の論文をその際主として検討した。科学研究費の申請時にまだ保有していなかった最近2年間のシュミッツの著書や,とくにシュミッツの『退官記念論文集』,キ-ルの「新しい現象学」の学会の年報(Neue Panomenologie in der Diskussion)に現れている論文の検討は,身体・感情・雰囲気の観点から見られた集合心性や集合意識の概念の具体化を帰結した。その具体性は,一つには,ハイデッガ-の気分の概念や,孟子の「気」の概念などの新しい解釈に結びついた「風」と「気」の概念の解明に結実した。要するに,シュミッツに見出される「風の現象学」と言うべきものを取り出すことに成功した。「風」は,「気」,気分,雰囲気と深く結びついていることが明らかになった。さらに,シュミッツの主観-客観関係を破壊する端的な知覚の思想から,感情と雰囲気の超-主観的存在次元への問,身体の広がりとその狭隘化の関係とに検討を加え,これらを,デユルケ-ムの「集合表象」概念やさらにベルクソンの「集合心性」概念と対比することも試みた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 小川侃: "気の哲学と雰囲気" あうろ-ら. 第5. 281-290 (1996)
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[Publications] 小川侃: "司馬遼太郎と水戸学の理論" あうろ-ら. 第7. 270-282 (1997)
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[Publications] 小川侃: "世界の構造存在論" 『世界・地平・雰囲気』所収. 1-96 (1997)
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[Publications] 小川侃: "気の哲学と雰囲気-風の現象学の試み" 人間存在論. 3. 323-334 (1997)
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[Publications] 小川侃(編): "世界・地平・雰囲気" 多賀出版, 1-390 (1997)