1999 Fiscal Year Annual Research Report
インド新理論学における論理的必然関係(vyapti)の文献学的研究
Project/Area Number |
09610020
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
和田 壽弘 名古屋大学, 文学部, 教授 (00201260)
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Keywords | Mathuranatha / Rahasya / vyapti / Gangesa / Tattvacintamani / 遍充 / 論理的必然関係 / Navya-nyaya |
Research Abstract |
マトゥラーナータの『タットヴァ・チンターマニ・ラハスヤ』「論理的必然関係章:ライオンとトラの定義」をほぼ等しい量に3分割し、本年度はその第3部分(「トラ」と呼ばれる人物による論理的必然関係の定義の非妥当性を扱った部分)のサンスクリットテキスト校訂、英訳、図式を用いての分析を終えた。この成果は、1本の学術論文として完成され、さらにもう1本が現在投稿中で初校を終えた段階である。これをもって本研究で予定された「論理的必然関係章:ライオンとトラの定義」に関する作業が、電子テキスト作成以外はすべて完了したこととなる。 本研究によって得られた知見は次の2点に要約できる。(1)ガンゲーシャの『タットヴァ・チンターマニ』「論理的必然関係章:ライオンとトラの定義」を、マトゥラーナータは、「基本(adhikarana)」「反存在(pratiyogin)」「制限者(avacchedaka)」など、関係に関わる概念によって解釈した。これによって、新論理学の目標は世界の構造あるいは様々な概念を関係によって分析することにある、という本研究者が従来から主張している仮設を裏付けることができた。(2)新論理学における分析の基本的単位は、ダルマ(保持されるもの)とダルミン(保持されるものを有するもの)という一対の概念であることも明らかにできた。それは、新論理学の分析結果が、その概念を基本単位とする図によって描かれうることが本研究によって示されたからである。この一対の概念の重要性は、新論理学を越えて、ダルマとダルミンの存在論的区別をなくそうとする「インド的唯名論」の立場に立つヴァーダーンタ学派などの研究にも有効であると思われる。
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