1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
高橋 堯英 立正大学, 仏教学部, 助教授 (00250035)
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Keywords | サカ / クシャン朝 / マトゥラ- / 仏教 / ジャイナ教 / ナ-ガ信仰 / ヤクシャ信仰 |
Research Abstract |
本年度、H.LudersのMathura InscriptionsやList of Brahmi Inscriptions、静谷正雄著『インド仏教碑銘目録』などを参考にしつつマトゥラ-出士碑文を整理し、ジャマルプル、カトラ-、カーンカリティーラー、マート、ソンクなどマトゥラ-市とその周辺地域における諸宗教の混在する宗教事情を調査した。同時進行的にR.S.SharmaやB.N.Mukherjeeら古代インド史研究家の業績を蒐集し、インド=ギリシア、サカ族、パフラヴァ族、クシャン王朝といった異民族支配がつづいたこの宗教都市マトゥラ-の政治的・経済的意義を明らかにする調査を実施した。その結果、仏教はマトゥラ-市内とマトゥラ-市周辺のカトラ-、ブ-テサル、チョウバ-ラ、アンヨ-ル、ジャマルプル遺跡に僧院が存在し、大衆部と切一切有部を中心とした仏教が栄えていたことが判明した。また、ジャイナ教はマトゥラ-市周辺のカーンカリティーラーに寺院とストゥーパが存在し、その他ナ-ガ信仰が仏教の栄えたジャマルプルに共存した他ギルダルプルやマホ-リ-村周辺地域やチャリガオンから発見され、「外套製造業者」等商人や民衆の信仰をあつめていたことが明らかとなった。また、樹の生命力を神格化したクベラ神などを信仰対象とするヤクシャ信仰のスポットとしてマトゥラ-郊外のパールカムを中心とする地域に根強く存在したことがヤクシャ像等の出士物によって明らかとされている。また、バラモン教の祭祀の実施を裏付ける碑文を伴った柱やクリシュナ信仰を中心とするヒンドゥー教の展開もクシャン時代のリンガ像やシヴァ神像などの出士物から明らかとされた。また、マートのクシャン王家のデ-ヴァクラも、性格的にはシヴァ神を祭った宗教施設であった可能性も指摘されていることが判明した。「宗教の坩堝」的な環境がマトゥラ-を中心に存在し、その宗教活動を可能なら占めていたのが、政治経済の要衝であったこの都市の繁栄であったことが理解された。
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Research Products
(1 results)