1998 Fiscal Year Annual Research Report
六朝末期における弥勒救世主信仰の成立と道教の終末論の影響に関する比較宗教史的研究
Project/Area Number |
09610035
|
Research Institution | Ohka Gakuen University |
Principal Investigator |
菊池 章太 桜花学園大学, 人文学部・比較文化学科, 助教授 (40231279)
|
Keywords | 仏教 / 道教 / 弥勒 / 六朝時代 / 終末論 / 敦煌写本 |
Research Abstract |
本研究は、六朝時代末期における弥勒信仰の変質過程を明らかにするため、救世主的弥勒信仰を語る6世紀中国撰述の疑経を直接の研究対象とし、その成立にあたって5世紀の道教の終末論と救済思想がどのような影響を与えているのかを比較宗教史的な視点から考察するものである。3年間の研究期間内に、敦煌写本によってその存在が知られる4点の疑経について、テクストの校勘と解読を行ない、言語および思想内容につぃて道教経典との比較検討を試み、この問題の解明に向けての文献的基礎を構築する予定である。本研究において考察の対象とする原典史料は、敦煌写本によってその存在が知られる『法滅尽経』、『般泥〓後比丘十変経』、『首羅比丘経』、『普賢菩薩説証明経』の4経典である。これらはいずれも6世紀に成立した中国撰述の疑経と見なされる。本年度はこの中から、6世紀の第3・四半期に成立したと思われる『首羅比丘経』を取り上げた。この経典は、上記の4経典のうちでも道教の終末論と救済思想の影響を最も濃厚に受けたものと考えられる。とりわけ、5世紀に成立した道教軽典『洞淵神呪経』に描写された終末的世界の様相と、それを克服する真君李弘による救済の構造は、『首羅比丘経』における月光童子による救済のあり方に顕著に受け継がれている。それを明らかにするための基礎作業として、ここでは『首羅比丘経』と『洞淵神呪経』における終末論と救済思想の構造分析を試みた。
|
Research Products
(2 results)