1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610053
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Research Institution | Aichi Prefectural University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
楢崎 洋子 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 助教授 (50254264)
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Keywords | 音の身ぶり |
Research Abstract |
武満徹(1930〜1996)の器楽作品とオーケストラ作品をはじめとするコンサート用作品ならびにポップソング、映画音楽等を対象に楽譜資料と音盤資料、映像資料を収集し、まず各作品において敷衍される単位としてのモチーフを抽出した。それらのモチーフに共通する音の身ぶりとして、短2度あるいは長2度で蛇行的に動く旋律進行を指摘するとともに、それとは対照的と思われる跳躍進行も前者との連続的な関係にあることを指摘した。 モチーフが反復されつつ敷衍されるプロセスの中で、上述の音の身ぶりが作品のコンテクストを生成する。モチーフがおもに短2度で進行する場合は、跳躍進行とのダイナミックな関係がオーケストレーションに敷衍され、一方、おもに長2度で進行する場合は跳躍音程には開かず、なだらかな旋律進行がオーケストレーションに支配し、むしろ音色変化が浮き彫りにされる。武満のポップソングのモチーフと互換性をもつこれらの器楽・オーケストラ作品のモチーフは、日本語を音に起こすさいの武満の方法意識に由来すると考えられる。武満の作品は、1960代に普及したトーン・クラスターやミニマル・テクスチュアを共有しているが、西欧の作曲家たちとは方法意識を異にしていることが裏付けられてくる。これまで総合的に考察されなかったコンサート用作品と、その他の作品の分析を通して、武満の音楽語法の特性とその由来を、より明確に指摘した。
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Research Products
(1 results)