1998 Fiscal Year Annual Research Report
院政期仏画における図像の継承と変容に関する基礎的研究
Project/Area Number |
09610061
|
Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
吉村 稔子 神田外語大学, 外国語学部, 助教授 (80265488)
|
Keywords | 院政期 / 虚空蔵菩薩像 |
Research Abstract |
本研究は院政期仏画における図像の継承と変容に関する基礎的研究として図像分析のための基礎資料の作成と、その院政期仏画への応用を試みようとするものである。図像分析のための基礎資料については、中国、日本の仏画の編年資料の作成を継続している。また院政期仏画の作品研究については、平成10年度には東京国立博物館保管虚空蔵菩薩像(国宝)を主要な対象として京都・醍醐寺蔵虚空蔵菩薩像(重文)と合わせて調査に着手した。 さきに拙論において二つの孔雀明王像を取りあげ、鎌倉時代の智積院本が原図像を忠実に転写しているのに対して院政期の東博本が造形的変更を加えていることを明らかにし、両者の比較をとおして院政期仏画における図像の特質について考察した。二つの虚空蔵菩薩像も、基本的に同様の関係にあると考えられる。鎌倉時代の醍醐寺本は原図像に比較的忠実だが、忠実でないところもあるため図像の年代に検討を要する。それに対して院政期の東博本は、醍醐寺本と同一の図像に基づいているのではないため、より自由な変更が行われている。 醍醐寺本では尊像の肉身、着衣、装身具、光背や蓮華座の細部形式に古様を指摘することができる。他方、東博本の変容は醍醐寺本と比較することにより容易に観取することができる。尊像の頭部の小さい撫で肩のプロポーション、面貌の細い眉、伏せぎみの目や低い髻、薄い垂髪、着衣の裙の裳掛け、豪華な櫻珞等に、穏やかさや装飾性を志向した院政期仏画通有の形式が認められる。金銀と寒色を多用し、月輪をおぼろな銀泥の暈で表した色感もこの時代の好尚を反映したものといえよう。
|
Research Products
(1 results)