院政期仏画における図像の継承と変容に関する基礎的研究

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09610061
• Research Institution: Kanda University of International Studies
• Principal Investigator: 吉村 稔子 神田外語大学, 外国語学部, 助教授 (80265488)
• Keywords: 十二天五大尊像 / 普賢菩薩像

Research Abstract

本研究は院政期仏画における図像の継承と変容に関する基礎的研究として図像分析のための基礎資料の作成と、その院政期仏画への応用を試みようとするものである。図像分析のための基礎資料については、中国、日本の仏画の編年資料の作成を継続している。また院政期仏画の作品研究については、平成12年秋に京都国立博物館において特別陳列「平安の美のいとなみ」があり、同館保管十二天像(国宝)、神護寺蔵釈迦如来像(国宝)等の研究対象作品を広く平安物画の展開のなかに位置付ける機会を得た。
東寺伝来十二天五大尊像については、『東宝記』にいう大師様について考察した。図像抄本類の記述をもとに検証すると、当時の大師様は現在よりも広い意味で理解されていたようであり、従来の『東宝記』の解釈はこうした視点が欠けていたように思われる。
豊乗寺蔵普賢菩薩像(国宝)については、古様な細部形式の特徴から、唐本図像にもとづくものと推定した。本図は奈良国立博物館保管十一面観音像(国宝)と同様、唐本図像を比較的忠実に転写している作例と考えられる。なお近年、東博本普賢菩薩像について唐本図像との関係が論じられているが、豊乗寺本と比較すると東博本は宋本とみなすべきであろう。