1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
喜多 伸一 神戸大学, 文学部, 助教授 (10224940)
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Keywords | 記憶 / プライミング / 潜在記憶 / 学習の転移 / 属性 / 特徴 / 輝度 / 運動 |
Research Abstract |
図形に対する潜在記憶の情報表現は,属性ごとに個別のモジュールに分かれた様式であるのか,属性の区分を離れてモジュール統合が行われた後の様式であるのかを検討した.モジュール性の有無の指標は,先行する学習課題から後続する検査課題に学習が転移するか否かとした.潜在記憶の情報表現様式にモジュール性があれば,学習課題と検査課題の図形を定義する特徴が同じときには学習は転移し,異なるときには転移しないであろう.この仮説を実験的に調べた.本年度は行列パターンを記銘材料とした実験を行った.その際,学習時と検査時で用いる行列パターンの定義属性が同じである条件と異なる条件で,学習の転移の有無をそれぞれ調べた.実験方法には,二次元の行列パターンを用いて,研究代表者が開発した,N-rook法と呼ぶ方法を用いた.この方法は,被験者に,各行各列に1つだけ他とは異なるセルを持つような完備行列パターンを学習させ,その後の検査課題で,非完備行列パターンを提示して完備行列パターンを構成させる.この種の行列パターンは並べ替え(順列)と同値であるので,学習した行列パターンを偶然に再現する率は50%となることが数学的に保証できる.ここで,被験者は,学習時に提示された完備行列パターンを何となく覚えていて,その結果,学習が転移し,検査時に既知の行列パターンを再現してしまう率が50%よりも高くなると予想した.実験結果は実際にそのようになった.ここで学習時と検査時で定義属性を変化させ,輝度・運動方向・色などさまざまなものを用いて,学習の転移の有無を調べたところ,定義属性が同じときのみ学習が転移することがわかった.この結果の一部を1997年6月に行われた認知科学会大会で発表し,結果全体を英語論文として投稿した.
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