1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
宮崎 謙一 新潟大学, 人文学部, 教授 (90133579)
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Keywords | 絶対音感 / メロディ認知 / 相対音感 / 音楽知覚 / 音楽経験 / 音楽能力 |
Research Abstract |
絶対音感保有者は、単独に提示された音の音楽的音名を他の音を基準として比較することなしに答えることができるが、このような能力が発達した場合、音高関係を処理する能力が十分に発達しないままにすぎてしまうという可能性がある。そこで、絶対音感保有者と非保有者を被験者にして、メロディの比較再認の実験を行った。 被験者に、標準メロディを楽譜として、比較メロディを聴覚的に提示して、これらが同じか違うかという再認判断を求めた。その結果、絶対音感を持たない被験者は、相対音高情報を用いることによって、聴覚的に提示された比較旋律と楽譜とのピッチの違いに影響されることなく、どの調性条件においても同じような正確さで旋律を判断することができた。これに対して絶対音感を持つ被験者は、一致条件では高い正答率を示したが、不一致条件では判断が不正確になった。また反応時間についても、これと対応した結果が得られた。これは絶対音感保有者がどの調性条件でも絶対音感ストラテジを用いていたためと考えられる。一般に用いられている楽譜表記法は、絶対音高の情報を表しており、旋律は絶対音高の系列として楽譜に表記される。しかし音楽的に重要な情報は音高関係であり、音楽家はそれを楽譜から読みとることができなければならない。この実験の結果から、絶対音感保有者が楽譜から絶対音高しか読みとっていないという可能性が示唆される。 このように絶対音感保有者の移調メロディの再認成績が、非保有者よりも低かったのは、音楽専攻学生の相対音高処理が十分に訓練されていない可能性がある。これが日本の音楽教育システムの問題なのかを検討するために、今後は同じ実験を外国の音楽学生について行い、結果を比較する予定である。
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