1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610088
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 正人 大阪市立大学, 文学部, 教授 (70106334)
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Keywords | ベイズ的推論 / 複合的確率事象 / オペラント条件づけ / 見本合わせ課題 / キイつつき反応 / ハト |
Research Abstract |
平成9年度は、主に、ハトを被験体として、複合的確率事象の推論(ベイズ的推論)を調べるために、ヒトの同種の課題として用いられている、いわゆる"タクシー問題"に類似した場面を見本合わせの手続きにより構成した。 この手続きでは、三つの反応用のキイのうち、中央のキイに見本刺激(赤または緑)が呈示され、これをつつくと見本刺激は消え、左右のキイに赤と緑の比較刺激が呈示された。この時、見本刺激と同じ比較刺激をつつけば、3秒間の餌箱の呈示で強化(正答)され、試行間隔(10秒)へ移行した。誤答の場合には、3秒間のタイムアウトの後、試行間隔へ移行した。"タクシー問題"における基礎生起比率は、ここでは見本刺激の偏り(生起頻度の相違)であり、見本刺激の偏りを二条件(p=0.9とp=0.7)設けた。また、"タクシー問題"における目撃証言の信頼度に相当するものとして、見本刺激に重ねて呈示する縦棒(情報刺激)を用い、この時は、見本合わせを行っても必ずしも正答にはならなかった(信頼度p=0.8)。このような手続きのもとで、訓練を行い、正答率が安定した後、以下の二種類のテストを行い、推論がどのように行われるのかを検討した。テスト1では、基礎生起比率の弁別可能性を調べるために、見本刺激も情報刺激も呈示せずに、いきなり比較刺激を呈示した。テスト2では、複合された確率事象(基礎生起比率と信頼度)をどのように利用するのかを調べるために、見本刺激を呈示せず、情報刺激のみ呈示した後、比較刺激を呈示した。 現在のところ、まだ実験は終了していないので、結果を明確に述べることはできないが、テスト場面での刺激の選択は、概ね「ベイズの定理」から予測される方向に変化していることが認められた。しかし、その精度については、必ずしも十分とはいえないので、今後、手続きをより構造化する必要があるように思われる。
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