1998 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児期の親子相互交渉における情動的コミュニケーションと愛着表象:世代間伝達仮説の検証
Project/Area Number |
09610095
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
陳 省仁 北海道大学, 教育学部, 教授 (20171960)
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Keywords | 情動制御 / 気質的特徴 / 実験室観察 / 母子相互交渉 / 方略 |
Research Abstract |
本年度は主に次の2つの分析を行った。1つ目は生後1年目の母子の情動制御についてであった。被験者は札幌市内に在住する母子52組であった。面接時の子どもの月齢は平均4.8ヶ月、実験室観察時の子どもの月齢は平均103ヶ月であった。母親の年齢は、22歳から44歳、平均28.9歳であった。面接者2名が家庭を訪問し、母親のとらえた子どもの気質的特徴(恐れ:14項目、快:15項目、注意:10項目、怒り:20項目、活動性:17項目)、なだめの方法(24名のみ、男児・女児それぞれ12名)、子どもの行動の特徴についての母親の予測や期待、きょうだいの性格などについて面接した。恐れ、快などの子どもの特徴については、1点〜7点までの7段階に評定させた。なだめの方法については、抱く、玩具を与えるなどの10項目についての頻度を母親に1点〜7点までの7段階に評定させた。又実験室観察(41組、男児20名・女児21名)を行った。母子が実験室に来室し、母子の分離再会場面を含んだ6つの母子相互交渉場面における情動表出などが観察された。主な結果: (1)4ヶ月時における母親のなだめ方略として、「物によるなだめ得点」、「感覚的なだめ得点」が主だった。(2)10ヶ月時の母親のなだめ方略として、「ラベル付けや感情の同定」、「謝罪・弁解」、「質問」、「なだめ」が主だった。(3)母親が質問やなだめを多く用いている場合、また、子どもの分離ディストレスの強度が強い場合、ディストレスの制御はむずかしくなる6(4)4ヶ月時の変数は10ヶ月時のラベル付け回数、謝罪・弁解回数、情動調律の強度を予測しなかった。一方、4ヶ月時の感覚的なだめ得点は10ヶ月時の質問・なだめ回数を予測した。4ヶ月時の変数は分離時におけるディストレス強度を予測しなかった。しかし、4ヶ月時の感覚的なだめ得点は、10ヶ月時の再会後のディストレスの制御得点を予測した。 次は 基本的情動の一つである怒りの表出の発達的変化、初期の気質からその個人の予測、及び性差を乳児期前期から後期にかけて検討することである。対象は縦断サンプル(母子22組(男児10名、女児12名))と横断サンプル(19ヶ月児22名(男児10名、女児12名)とその母親)を用いた。方法は気質質問紙(Infant Behav10r Qucstionnaire)及び実験観察。主な結果は32ヶ月時の怒りは5ケ月時の「恐れ」、「微笑と笑い」 「定位の持続時間」尺度と関係があったことであった。
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