1998 Fiscal Year Annual Research Report
他者との親密度が感情推測および感情評価過程へ及ぼす効果についての実験的研究
Project/Area Number |
09610096
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐藤 香 山形大学, 人文学部, 助教授 (50183827)
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Keywords | 感情経験 / 感情反応 / 親密度 |
Research Abstract |
コミュニケーションが効果的、適応的に行われるには、対人関係で他者が発するシグナルとしての感情表出、行動を的確に読み取り、そこから他者の感情を的確に推測し、またその他者との関わりにおける自分自身の内的状態も把握する必要がある。従来の感情コミュニケーションの研究では、表情や姿勢等に研究の対象が集中している。また、他者を弁別的に取り扱った試みは、顔の感情表出研究で、友人かあるいは見知らぬ人と同席するかによって表出結果の検討を行ったもの等があるのみである。本研究の特色は、上述のような心理学の分野における感情研究の現況を鑑み、他者を親密度の違いによって弁別的に取扱い、自己の感情反応・経験の評価過程について検討を加えるところにあった。具体的な研究は以下のように行われた。各種の刺激感情を被験者に擬似体験させるという実験操作を用いて、各種の自己の感情反応・経験の評価過程について実験的に検討した。親密度の違いにより3種の他者(無縁、知り合い、親しい他者)を分類し、他者との共存場面での表出の制御や自己開示等、自己の感情経験・内的状態の評価および感情反応過程に違いがみられるかを検討した。本研究で行われた実験の主な結果は以下のようになった。共存他者との親密度の感情喚起への効果は、特に幸福感のような正の感情に観られ、目的達成がなされたことによって生じた幸福感は、同じ事態に参加していた地位の差のない中程度の親しさの他者との共存場面でより強く喚起された。また、怒り感情は、その感情の発生した事態を引き起こしたことに対する責任のない中程度の親しさの地位の高い他者に対して開示されることが示され、自己の感情経験の評価および感情反応に共存他者との親密度の違いが影響する可能性が示唆された。
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