Research Abstract |
平成9年度における研究計画 【実験1】暴力映像の印象について分析することを目的にした.テレビ放映や年間配給収入が高い洋画の中から28本の暴力的映像を選択した.4本の映像で1つの刺激セットを作り,呈示順序を逆にしたものを合わせて,合計14種類の刺激セットを作成した.刺激セットの各映像を題名と概略を述べた後に約3分間放映し,質問紙上で映像の印象に関する評定を行わせた.因子分析の結果,“・快-陰鬱"“力動性"“現実-虚構"“様式化"の4因子を抽出した.28映像のなかでも,ドキュメントや戦争映画は,陰鬱で,現実的で,様式的でなく,アニメーションや時代劇は,・快で,力動的で,虚構的で,様式的であるといった印象が強かった. 【実験2】暴力映像を暴力性と娯楽性という観点から比・分析し,感情との関係を検討すること,および視・によって生じる感情,および映像の内容との関係を分析し,暴力映像の分類を試みることを目的にした.実験1の分析に基づいて10種類の映像を選択した.5本の映像で1つの刺激セットを作り,呈示順序を逆にしたものを合わせて,合計4種類の刺激セットを作成した.手続きは,実験1と同じであった.その結果,(1)残酷で衝動的な映像ほど“暴力性"が高く,一方,残酷さがなく虚構的で様式化された映像ほど“娯楽性"が高いといった印象を与えた.(2)“暴力性"と“娯楽性"といった印象評価は,映像中に含まれる暴力行為の出現頻度とは無関係であった.(3)映像の“暴力性"と不快感情および虚無感情,“娯楽性"と快感情との間に有意な正の相関がみられた. 【実験3】暴力性および娯楽性の程度が高中低と異なる暴力映像が視・者の感情・認知・生理反応に与える影響を分析することを目的にした.実験2の結果から(1)暴力性/娯楽性の程度が高中低と異なる,(2)フィクション映像である,の2つの基準で4類の映像を選択した.はじめに3分間安静状態で生理反応の基準値を得て,映像の題名と概略を述べ約3分間放映した後,視・中に思い浮かんだ思考を3分間自由に記述させた.次に質問紙上で(1)映像の印象,(2)視・によって生じた感情,に関する評定を行い,最後に再び安静状態での生理反応を3分間測定した.その結果,(1)“暴力性"の高い暴力映像は不快感情思考,不快感情,虚無感情を,一方,“娯楽性"の高い暴力映像は快感情思考,快感情を強く生じさせた.(2)女子のほうが不快感情思考,不快感情を強く抱いた.(3)反応相互間の分析の結果,暴力映像によって生じる感情と思考は対応関係にあった.
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