1998 Fiscal Year Annual Research Report
子供の社会道徳的判断における大人の権威の受容、拒否と自己決定
Project/Area Number |
09610104
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
首藤 敏元 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (30187504)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二宮 克美 愛知学院大学, 情報社会政策学部, 教授 (20135271)
|
Keywords | 道徳性発達 / 社会的ルール / 権威概念 / 自己決定 / 親子関係 / 教師 |
Research Abstract |
本研究の目的は、幼児期から青年期までの子どもが、大人の権威や権限をどのように理解するのか(権威概念の発達)、規範や権威に縛られない個人の決定権をどのように意識化し概念化するのか(個人概念の発達)、および大人-子ども間のさまざまな社会道徳的葛藤場面において権威の受容と自己決定権の意志をどのように使い分けるのかについて明らかにすることである。本年度は、以下の点を検討した。 1. 幼児と母親との間の社会道徳的葛藤を収集し、そこでの社会的相互作用を分析することを通して、幼児がどのような場面で自己決定を主張し、それに母親がどのように対応するかを分析することにより、幼児の自己決定意識と社会道徳的概念(権威、慣習、道徳)の発達の基礎となる社会道徳的経験を検討した。 この調査は浦和市内の幼稚園の保護者36名を対象に実施された。母親は日常的な幼児の反抗反発場面とそれに対する自分のかかわりについて1ヶ月間記録した。その後、その記録に基づいて個別面接が実施された。母親は幼児の生活習慣や自己制御に関係した場面で多くの働きかけを行い、その多くは提案や説得や示唆を含んだ間接的なものであることが示された。また、向社会的な場面では、母親は指示的になるよりも、幼児が利己的行為を自発的に制御できるような働きかけを行う傾向のあることが認められた。 2. 小学4年生と6年生128名を対象に、児童の親権威概念を調査した。児童は反社会的場面(道徳領域)と慣習領域での親権威を認める傾向がある一方で、向社会的場面(道徳と個人領域との混合領域)では個人の権限をより強く意識していた。児童は親の権限を親という対象に付随させているのではなく、場面の性質との関連で概念化していることが示唆された。 3. 学校場面における教師権威の概念について、中学生、高校生、大学生348名を対象に調査を行った。 その結果、青年たちは道徳と慣習領域において教師の権限を認める傾向のあること、個人領域では自己決定意識を持つこと、高校生が最も教師権威を否定する(自己決定権を意識する)傾向のあることが見出された。青年は教師の権威に単に反発するのではなく、場面の性質に応じて教師権威を受容したり拒否したりすることが示された。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 首藤敏元: "児童の社会道徳的逸脱に対する教師の判断と理由づけ" 埼玉大学紀要教育学部. 47・2. 25-38 (1998)
-
[Publications] 首藤敏元: "児童の社会道徳的判断の発達" 埼玉大学紀要教育学部. 48・1. 85-95 (1999)
-
[Publications] 首藤敏元・二宮克美: "幼児の社会道徳的発達環境としての母親のしつけの態度" 日本教育心理学会発表論文集. 40回総会. 95 (1998)
-
[Publications] 首藤敏元・二宮克美: "幼児における大人の権威の受容と拒否" 日本心理学会発表論文集. 62回大会. 199 (1998)
-
[Publications] 首藤敏元・二宮克美: "幼児と母親のつくりだす日常の社会道徳的文脈" 日本発達心理学会. 第10回大会. 359 (1999)
-
[Publications] 二宮克美・首藤敏元: "大学生の教師権威の概念化" 日本性格心理学会論文集. 7回大会. 28-29 (1998)