1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610109
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Research Institution | KANAZAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
池上 貴美子 金沢大学, 教育学部, 教授 (10242512)
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Keywords | 未知顔再認 / 配置情報操作 / 表情 / 外部顔・内部顔 / 笑顔・怒り顔・真顔 / 3才,5才,9才 / 質的転換 / 干渉 |
Research Abstract |
本研究では3歳児をも含めた5歳児9歳児を対象に幼児期から児童期にかけての、未知顔の再認に及ぼす配置情報(目、鼻、口などの要素の顔全体における位置の情報)と表情(笑顔、怒り顔、真顔)の要因に関する発達機構の実証的検討を行なった。その結果、3歳児は内部顔(内部特徴情報-目、鼻、口など)よりも外部顔(外部特徴情報-髪型、顎など)を手がかりに再認を行なう方が容易いが、9歳児は外部顔・内部顔の両情報を有効に利用して未知顔再認を行ない、5歳児はその過渡期と位置づけられた。そして内部顔の再認が困難な配置条件とは、3歳児と5歳児にとっては内部顔の原型配置情報(目、鼻、などの要素の顔の中の元々の位置)が操作された条件-例えば目口鼻の配置、左が顔上部として下線部の位置は元のままで正しいが他の要素の位置は元の位置とは異なる-と、2つの要素間の関係配置情報(目の下は鼻などの位置関係の情報)は保たれているが原型配置をもたない条件-口目鼻 下線部の位置関係は正しい-であり、9歳児では後者のみが難しかった。関係配置情報よりも、原型配置情報がより重要であるとの結果は、Baenninger(1994)を支持する方向であるが、一方、5歳児と9歳児の間の変化は、Diamond&Carey(1997)の10歳頃の質的転換を示唆するものであった。 表情の要因に関する幼児期の研究は未踏の領域であるが、未知顔の再認が未だ難しいとされる3歳児では、内部配置の入れ替えの無い統制条件(普通の再認)においては怒り顔が再認が高く、怒りの表情が刺激全体の印象を強めるためと推察されたが、内部配置の操作された条件においてはむしろ怒り顔の再認は低かった。一方、5歳児では内部配置の操作された条件において、怒り顔は再認が高く、むしろ笑顔で再認が低かく、同様に9歳児においても関係配置情報のみを有する難しい条件では、笑顔で再認が低かった。このように3歳児と、5・9歳児の間には影響する表情の異質性が示唆されるが、配置情報の操作を伴う条件下で、表情が人物同定に妨害(抑制)的に働く結果は共通であった。 Bruce&Youngなどによって、表情と顔の構造の符号化は独立の処理過程であるとされてきたが、幼児が目撃証言に関わるケースが起こり得る現代の社会的状況の下で、本研究は基礎的データを提出するものであり、今後も引き続き早期幼児期をも含めた顔の認議過程に関するモデルの再検討が持たれる時代的要請がある。
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[Publications] 池上貴美子: "子どもの未知顔再認に及ぼす配置情報の発達的検討" 日本教育心理学会第40回総会発表論文集. 40. 133 (1998)
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[Publications] IKEGAMI Kimiko: "The Development of Differential Use of Outer and Inner Face Features with Configurational Manipulation in Unfamiliar Face Identification." Abst.of Int.Society for the Study of Behavioral Development. 15. 172 (1998)
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[Publications] 池上貴美子: "動く顔図版に対する原初的コミュニケーションの発生的機序" 電子情報通信学会技術研究報告. 98,311. 25-32 (1998)
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[Publications] 池上貴美子: "模倣することの意味" 正高信男編『赤ちゃんの認識世界』ミネルヴァ書房. 75-114 (1999)
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[Publications] 池上貴美子: "子どもの未知顔再認に及ぼす配置情報と表情の発達的機構" 日本教育心理学会第41回総会論文集. 41未定. (1999)
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[Publications] 池上貴美子: "早期乳児の顔の模倣の発生的機序に関する研究" 風間書房, 64 (1998)