1997 Fiscal Year Annual Research Report
Facilitated Communicationの妥当性に関する事例研究
Project/Area Number |
09610115
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
神野 秀雄 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70024081)
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Keywords | Facilitated Communication / 身体接触 / 妥当性 / 自閉症 |
Research Abstract |
Facilitated Communication(以下FC)は、1990年代に入ってから欧米諸国で大流行し、障害児教育に大きな影響を与えてきた。FCのポイントは、FacilitatorがUser(自閉症児・者)の手や肘などの身体に触れることであろう。その視点からみると、わが国でも1973年に若林が「書字によるコミュニケーションが可能となった幼児自閉症の1例」を発表しており、まさに母親によるFCの実践の報告であった。しかし若林は、身体に触れる教育方法に特に注目しなかったこともあって、わが国の障害児教育に影響を与えることはなかった。むしろアメリカのBiklenらの最近の研究の影響が大きいように思われる。 著者は、FCによる文章表現が可能となった自閉症児にプレイセラピィを実践し、コミュニケーション能力や人格発達について縦断的に追跡しているが、同時に今年度においては、特殊学級や養護学校の教員120名に対してFC現象にかかわる自由記述による調査を行い、身体に触れることの意味について検討した(神野,1998)。特に障害児教育現場においては、教師が児童・生徒の手をもって書写を指導したりすることが多くみられることから、身体に触れる教育方法について、そこからどんな現象が生起してくるかについて検討してみたかったのである。その結果、教師からは、児童・生徒に手を添えたり、肩に触れたり、そばで見守ったりするエピソードが多く報告されたが、その教師の行動は、encouragementあるいはemotional supportと理解されよう。興味ある結果としては、120名中4名の教師が、若林の報告と同様に母親がFacilitatorの役割を果たし、文章を記述できる児童・生徒について報告していたことである。このようにFC現象は母子関係という濃厚な人間関係の中から惹起されやすいように思われ、そのメカニズムや妥当性について更に事例研究を通して検討していきたい。
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Research Products
(1 results)