1998 Fiscal Year Annual Research Report
Facilitated Communicationの妥当性に関する事例研究
Project/Area Number |
09610115
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
神野 秀雄 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70024081)
|
Keywords | Facilitated Communication / 身体接触 / 妥当性 / 自閉症 |
Research Abstract |
Facilitated Communication(以下FC)の妥当性の検討を目的として事例研究を行った(神野1999)。 B子(特殊学級)は、小2の9月に本センターに初来所した。担任のY先生は、FCに関心をもたれ、B子のFacilitator(以下Fa)となって実践された。その実践は以下の3段階に区分された。第1段階:平仮名のなぞり書き及び視写の段階。第2段階:Y先生がB子の手首や肘をサポートすれば、B子が先生の掌に文章を書く段階。第3段階:次第に文章をindependentlyに産出できるようになり、サポートさえあれば直接ノートに文章を書く段階。B子の小1の時点では、田中ビネー検査でIQ30であった。小2にY先生がFaになり同じ知能検査を実施するとIQ91となり、FC状況では、ほぼ年齢に応じた能力を発揮していることになる。しかしながらB子は小4の頃より学校ではパニックを頻発するようになり、小5の2学期より養護学校に転校してしまった。一方本センターにおけるプレイの状況の経過をみると、トランポリンやブランコといった感覚的な遊びを好み、担当セラピストへの身体接触(甘え)が現在まで(養小6)継続してみられてきた。また言語面では、idiosyncraticなことばやオーム返しの段階のまま変化がみられていない。B子は小4の頃より家庭や学校で極めて不安定な状態となり、加齢とともにdevelopしていくというよりも、停滞あるいはdeteriorateしていると思われる。FCが人格発達に寄与するかどうかという視点からその妥当性を考えると、B子に関していえばむしろ有害な影響を与えたかもしれない。FCは自閉症児にとって極めて浸襲的であるからである。FC現象を惹起する要因として(1)知的に重度であること(2)Faと自閉症児との間に濃厚な関係が成立していること(3)自閉症の凄い機械的記憶力(4)自閉症児のPassivityなどが考えられ、これらの要因の連関やメカニズムについての検討は次年度の課題としたい。
|
Research Products
(1 results)