1999 Fiscal Year Annual Research Report
郊外型キャンパスにおける学生の自殺防止活動に関するコミュニティ心理学的研究
Project/Area Number |
09610122
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
兒玉 憲一 広島大学, 保健管理センター, 教授 (10186702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内野 悌司 広島大学, 保健管理センター, 助手 (00294603)
中丸 澄子 広島大学, 保健管理センター, 助手 (30034672)
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Keywords | 郊外型キャンパス / 学生の自殺 / 自殺防止活動 / コミュニティ心理学 / ピア・サポート・ルーム / 院生相談 / 社会資源 |
Research Abstract |
目的:継続研究最終年度の平成11年度には,過去2年間に引き続き学生自身による学生相談活動及び専門窓口による学生相談活動を通した自殺防止に関するコミュニティ心理学的研究を行った。 方法:(1)学生対象にピア・サポーター養成セミナーを開催し,学生ボランティアをピア・サポーターとして養成する心理教育プログラムを開発するとともに,参加者の意識調査を通してプログラムの妥当性や有効性を検討した。 (2)過去3年間における学生相談の事例,とくに院生相談の事例を自殺防止の観点から検討した。 結果と考察:(1)ピア・サポーター養成セミナーの参加学生実数は89名,2時間の講義10回,ロールプレイングによる実習6時間というハードなセミナーの全過程を修了した学生実数40名(44.9%)。こうした結果を受けて,セミナーの終了後,次年度から正式に広島大学ピア・サポート・ルームが設置されることになった。その後,計13時間の補講が行なわれ,24名(27.0%)の学生がピア・サポーターとして登録された。熱心な学生たちの協力で,本学のピア・サポート・プログラムが短期間に具体化された。また,心理教育プログラムの有効性や妥当性も前年度よりも格段に向上した。 (2)この3年間に本学の学部生の自殺既遂例は激減したが,院生の自殺は減少しなかった。院生相談の事例の分析を通して自殺問題の背景には,精神障害だけではなく,研究指導上の問題やハラスメント等の指導教官サイドの問題も関与していることが明らかになり,院生相談体制の充実が必要であることがわかった。 結論:自殺学生の急増という危機に直面した郊外型キャンパスで,学内の潜在的な社会資源をできるだけ多く有効活用するというコミュニティ心理学的な発想で多様な自殺防止の活動を行った結果,学部生の既遂例は減少傾向に転じたが,院生の既遂例や学部生の未遂例は依然として多く,予断を許さない状況が続いている。今後も学内で多様な学生相談活動を展開するとともに,学外の社会資源との有効かつ緊密な連携を図る体制を構築する必要があると思われる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 兒玉憲一,他: "学生相談から見たハラスメント相談"第29回中国四国大学保健管理研究集会報告書. 103-105 (2000)
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[Publications] 兒玉憲一,他: "広島大学における院生相談の現状と課題"CAMPUS HEALTH. 36(1)(印刷中). (2000)
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[Publications] 内野悌司,他: "カルト問題と学生相談-脱会後支援について"CAMPUS HEALTH. 36(1)(印刷中). (2000)
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[Publications] 内野悌司,他: "破壊的カルトに関与した学生のカウンセリングに関する一考案"総合保健科学. 16. 39-50 (2000)
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[Publications] 兒玉憲一(分担執筆): "一丸藤太郎編「カウンセラーから見た心の風景」 第4章 カミングアウトから連帯へ"広島大学. 10/60 (1999)
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[Publications] 兒玉憲一(分担執筆): "氏原寛,成田善弘編「コミュニティ心理学とコンサルテーション,リエゾン」 第17章 HIV/AIDSカウンセリング"培風館. 8/329 (2000)